2016 Fiscal Year Annual Research Report
Design and synthesis of heavy atom-free photosensitizers based on the biradical intersystem crossing mechanism and its application to photodynamic therapy
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16H04176
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
湯浅 英哉 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90261156)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光増感剤 / ビフェニル化合物 / ビラジカル / ランタニドナノ粒子 / 三重項生成機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新しい低分子量光増感剤を開発し、癌の光線力学治療(PDT)への応用を目指す。医薬品の高組織移行性と低免疫原性を保つためには、分子量500以下であることが望ましいとされている。PDTで用いる光増感剤も同様の分子量であることが望まれるが、これまでわかっている増感機構による分子設計では分子量が大きくなりがちであった。一方、我々の固体室温燐光物質の研究により、電荷移動(CT)光励起で生成するビラジカルを使えば低分子でも増感作用に必要な励起三重項(T1)を効率的に生成できることが明らかになっている。本研究では、ベンゼン環が単結合で共有結合してつながったターフェニルやビフェニルを骨格として、分子内でCTを起こすことによりT1を容易に生成できる分子の探索を行った。その結果、両端にニトロ基とメトキシ基を持つビフェニルがCT吸収を示すとともに、T1由来の過渡吸収も示し、さらに三重項酸素から一重項酸素を生成する光増感能を持つ事を明らかにした。この増感能は、同じく低分子量の増感剤であるベンゾフェノンより2倍以上大きいものであった。CT吸収については分子軌道計算でも裏付けられた。このように低分子量(229.2)の化合物が光増感能を持つことは稀であり、実用的なPDTの増感剤として開発する価値がある。本研究では、この新しい増感機構を確かめるとともに、癌選択性を付与することをさらなる目的とする。現在、癌においてグルコース輸送体の発現が亢進することを利用し、グルコースが付加したビフェニル誘導体(分子量約410)の合成を検討している。この新しい増感剤の励起波長は360 nm付近であり、組織深達性が非常に低い波長の光となる。そこで、組織深達性が100倍以上大きい980 nmのレーザー照射で360 nmのアップコンバージョン発光を示すランタニドナノ粒子を併用することでこの問題の解決を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画においては、ターフェニル化合物の合成を種々行い、これを増感剤としてランタニドナノ粒子の表面に修飾し、光線力学治療(PDT)効果を検証することが初年度の目的となっていた。実際は、ターフェニル化合物よりも低分子量で構造がシンプルなビフェニルの方がターフェニルより増感能が大きいことを見出したために、研究方針を変更した。すなわち、粒子径が200 nm 程度ととてもサイズが大きいLNPに低分子量増感剤を修飾する方法は、「研究実績の概要」で解説したように、医療目的としては適切ではなく、LNPと低分子量増感剤を別に投与し、LNPの癌組織選択性と低分子量増感剤の癌細胞選択性をダブルに働かせて効率的に癌選択性を起こすことにした。したがって、LNPの癌織選択性研究と低分子量増感剤の癌細胞選択性を平行して行う計画となり、それぞれおおむね順調に進行している。当初の初年度計画には載せていなかったが、ビフェニル化合物の構造と分光学的特性、増感能、その他についての相関関連研究については予想以上に進展しており、ビラジカル機構によるT1生成メカニズムが確立しつつあり、新しい理論に基づく光増感剤開発に拍車がかかりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で記したように、当初の計画から研究の方向性が変更され、癌細胞選択性を持った低分子量光増感剤の開発とLNPの併用による癌の光線力学治療、およびその増感機構の確立となった。癌細胞選択性は、グルコース輸送体を標的とし、グルコースを光増感剤に付加させることで達成しようとしている。グルコースを標的リンガンドの第1候補としたのは、低分子量であり、化学的に安定、安価で扱いやすいためである。しかし、グルコースでうまく癌細胞選択性が出るとは限らない。我々のこれまでの検討では子宮頸癌のHeLa細胞に対して、グルコースが標的リガンドとして適切であることを見出しているが、胃癌のMKN45細胞ではグルコースは標的リガンドとして機能しなかった。このような場合にはその他の有望な標的リガンド(葉酸、ポルフィリン、抗体など)を利用することも計画する。癌選択性の検証は、最終的には担癌マウスを用いビフェニルが持つ蛍光発光を用いたイメージングにより行う。イメージングと同時にPDT効果の検証も行う。新しい増感機構の検証にあたっては、ビラジカルのT1生成が磁場効果を顕著に受けることを利用する。ビフェニルの蛍光や可能なら燐光の発光強度や発光寿命と磁場の関係を調べる。以上のメカニズム研究により、さらに効率的な低分子光増感剤の開発に結び付ける。
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[Journal Article] Coating lanthanide nanoparticles with carbohydrate ligands elicits affinity for HeLa and RAW264.7 cells, enhancing their photodamaging effect2017
Author(s)
Takashi Kanamori, Takashi Sawamura, Tatsumi Tanaka, Izumi Sotokawa, Ryota Mori, Kotaro Inada, Akihiro Ohkubo, Shun-Ichiro Ogura, Yasutoshi Murayama, Eigo Otsuji, Hideya Yuasa
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Journal Title
Bioorganic & Medicinal Chemistry
Volume: 25
Pages: 743-749
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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