2016 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光性有機液体ナノ粒子の創出と細胞内蛍光イメージングへの応用
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16H04179
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
多喜 正泰 名古屋大学, 物質科学国際研究センター(WPI), 特任准教授 (70378850)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機蛍光ナノ粒子 / 液体蛍光色素 / マルチカラー発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題である「蛍光性有機液体ナノ粒子の創出と細胞内蛍光イメージングへの応用」について,28年度は主に蛍光性有機液体ナノ粒子の創出に取り組んだ。まず,ピレン骨格にトリアルキルシリル基を導入して,ピレンの融点を室温以下にさげることで,種々の液体ピレンを作製した。アルキル基の効果について検討したところ,cis-オレフィンを有するピレンが最も低い粘度を示した。液体ピレンを用いてナノ粒子を作製し,粒径と粘度の相関関係について検証したところ,低粘度液体の方が小さい粒子を与え,DLSから平均粒径が150 nm程度であることを明らかにした。また,得られたナノ粒子は水中でも凝集せず,長期間安定に存在した。次に,単一励起波長によるマルチカラーイメージングを目指し,発光色のチューニングを行った。通常,多色の発光特性をもつ蛍光ナノ粒子を作製するためには,ナノ粒子作製前に予めドーパントを添加して調整しておく必要がある。一方,本研究ではナノ粒子内部が液体であるという特性を活かし,新たなカラーチューニング法を見出した。すなわち,ナノ粒子の水分散液に他の発光色を示す脂溶性蛍光分子(ドーパント)を添加すると,これらの色素が自発的にナノ粒子内部に取り込まれるという現象である。この場合,青色発光を示すピレン近傍にドーパントが存在するため,効率的な蛍光共鳴エネルギー移動がおこり,発光色が変化することを明らかにした。実際,緑および赤色蛍光を示すドーパントを適量添加するという簡便な操作で,単一励起波長によるフルカラー発光を実現し,本成果をJ. Mater. Chem. Cに報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体ピレンを内包した蛍光ナノ粒子はカラーチューニング可能な新たな機能性材料であることを示したが,このものは光安定性に乏しく,光照射によって速やかに褪色してしまった。これを克服するため,当研究室から近年報告された超耐光性蛍光色素を基盤にし,これをトリアルキルシリル基で修飾することによって液体化することを試みた。様々な条件検討を重ねた結果,目的とする液体蛍光色素を得ることができた。実際,このもののアセトニトリル溶液にキセノンランプを長時間照射しても全く褪色が認められなかった。しかし,これをナノ粒子化した場合には予想に反する結果となった。すなわち,溶媒が存在しない条件では光照射による吸光度の変化が認められ,蛍光強度も大きく減少してしまった。溶液状態に比べてナノ粒子の蛍光褪色が早くなってしまった原因については定かでないが,色素同士の分子間相互作用が可能性として挙げられる。質量分析等で反応生成物を同定し,次の課題に繋げたい。一方,表面修飾については葉酸をナノ粒子表面に担持することができ,細胞選択的なナノ粒子の取り込みを達成できる可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
「蛍光性有機液体ナノ粒子の創出と細胞内蛍光イメージングへの応用」について,ナノ粒子の創出はある程度達成したが,細胞イメージングを行うためには耐光性の改善が必須である。超耐光性蛍光色素を液体化し,これをナノ粒子化しても褪色してしまったことから,新たな戦略でこれを解決する。すなわち,液体蛍光色素の超耐光性が保持できる濃度になるまでマトリックスで希釈し,これをナノ粒子化するというものである。超耐光性液体蛍光色素濃度を均一に保つため,分散させるマトリックスは液体であることが望ましい。例えばトリアシルグリセリドを用いて,濃度と耐光性の相関関係を検討する。耐光性が獲得できれば,これまでの手法に基づいてこれをナノ粒子化する。さらに平成28年度で得られた成果を基に,ナノ粒子のカラーチューニングを行う。ナノ粒子の有用性は細胞イメージングにより検証する。顕微鏡レーザーに長時間光を照射し,蛍光強度の減衰度合いを評価する。またナノ粒子の輝度は蛍光相関分光法を用いて定量化する。
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Research Products
(6 results)