2016 Fiscal Year Annual Research Report
紅色細菌の光捕集色素タンパク質・極性カロテノイド複合体の光機能の解明と制御
Project/Area Number |
16H04181
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
橋本 秀樹 関西学院大学, 理工学部, 教授 (50222211)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 光合成 / アンテナ色素タンパク質複合体 / カロテノイド / 超高速レーザー分光 / コヒーレント分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成器官は、自然が創造した最も光エネルギー伝達・変換効率の良いバイオナノデバイスである。特に、褐藻類は、単一分子内に電荷供与体と受容体を合わせ持つ極性カロテノイドを光受容体として、その光励起状態で発現する分子内電荷移動(ICT)励起状態を活用し、クロロフィルへの高効率(90%以上)なエネルギー伝達を実現している。本研究は、紅色光合成細菌由来の光捕集タンパク質を基盤とした革新的プラットホームを開発し、これを用いて、カロテノイド-クロロフィル間の励起エネルギー移動の実時間計測・コヒーレント分光計測を行うことにより、高効率人工光合成光捕集アンテナ系を創製するための鍵を握る、ICT励起状態の発現機構及び電子・振動構造を解明することを目的としている。今年度は,藻類由来のカロテノイドの一種フコキサンチン(Fx)と紅色光合成細菌のアンテナ色素タンパク質を用いた人工光合成アンテナを世界で初めて構築し,吸収および蛍光励起スペクトル測定によりFxからバクテリオクロロフィルへ励起エネルギー伝達が起こっていることを明らかにした。Fxを用いた再構成LH1複合体のフェムト秒時間分解吸収分光測定を行い、バクテリオクロロフィルへエネルギー伝達効率を行うFxと行わないFxの2種類がLH1複合体に結合していることが分かった。速度論的解析を行ったところ,前者のFxは 83% に達する高いエネルギー伝達効率を有していることが明らかになった。本研究成果は,人工光合成の実現のために必須である高効率エネルギー伝達を可能にする人工光合成アンテナ系の開発に資することが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
褐藻類由来のカロテノイド色素を紅色光合成細菌由来の集光性アンテナ系に組み込む再構成技術を開拓できたことで,本研究課題を遂行するための基盤整備を実現することができた。再構成したカロテノイドからバクテリオクロロフィルへの一重項励起エネルギー移動をフェムト秒時間分解吸収分光を用いて追跡し,カロテノイドのS1/ICT状態を経由して高効率なエネルギー伝達が行われているという本研究の核心に至る興味深い結果を得た。しかしながら,S2状態からのフェムト秒オーダーの励起エネルギー移動機構を解明するという課題が残されており,今後,測定試料の安定化を含めた検討が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究初年度の最終段階で,主力設備であるフェムト秒再生増幅レーザーに不具合が生じ,ようやくベストの80%のパワーを復調させることができている。今後,同レーザーの光学系をリペアし,可能な限りベストコンディションを実現する予定である。また,これと同時に研究課題である縮退4光波混合およびpump縮退4光波混合測定系の構築に取りかかる。測定試料に関しては,フローセルを利用して試料のダメージを最小限に抑える等の工夫が必要であり,そのために再構成色素タンパク質複合体試料の大量調製法を確立する。
|
Research Products
(34 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Challenges facing an understanding of the nature of low-energy excited states in photosynthesis2016
Author(s)
*J.R. Reimers, M. Biczysko, D. Bruce, D.F. Coker, T.J. Frankcombe, H. Hashimoto, J. Hauer, R. Jankowiak, T. Kramer, J. Linnanto, F. Mamedov, F. Muh, M. Ratsep, T. Renger, S. Styring, J. Wan, Z. Wang, Z.Y. Wang-Otomo, Y.X. Weng, C. Yang, J.P. Zhang, A. Freiberg, *E. Krausz
-
Journal Title
Biochim. Biophys. Acta
Volume: 1857
Pages: 1627-1640
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Incorporation of Algal Carotenoids into the Light-Harvesting System from a Purple Photosynthetic Bacterium2016
Author(s)
〇Hideki Hashimoto, Nao Yukihira, Yuko Sugai, Masazumi Fujiwara, Masahiko Iha, Kazuhiko Sakaguchi, Shigeo Katsumura, Alastair T. Gardiner, and Richard J. Cogdell
Organizer
2016 American Society for Photobilogy Conference
Place of Presentation
Tamap Marriott Waterside Hotel & Marina (Tamap, Florida, USA)
Year and Date
2016-05-21 – 2016-05-26
Int'l Joint Research / Invited
-