2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04195
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
栄長 泰明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00322066)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / 磁性 / 超伝導 / 光制御 / 界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度に作製した、白金-鉄ナノ微粒子、ならびに表面修飾によりその機能化を行うための光応答分子を用いて、それらの複合磁性材料を創製した。 特に、光異性化により、大きなダイポールモーメントの変化が期待されるスピロピラン化合物で、磁性材料界面に修飾可能な末端をもつ分子を設計することで、所望のナノ微粒子を創製することに成功した。作製した微粒子は、紫外光、可視光の可逆な光異性化に伴って、非常に大きな室温強磁性の光制御に成功した。それらの変化は、これまでにアゾベンゼン等で得られた光変化より格段に大きく、本手法により、界面の化学制御が、電子物性の制御に有効であることが示された。 一方、界面物性の制御に関する基礎検討として、コバルト-鉄-ホウ素/銀/ビスマスの系に、表面修飾できる末端をもつフォトクロミック分子を修飾するシステムを構築した。この材料に光照射を行うことで、スピン-軌道相互作用を制御するという新しいシステムを構築した。はじめに有機分子を修飾することでそのスピン軌道相互作用は変化し、さらに、アゾベンゼンのシス-トランス光異性化に伴って、可逆にスピン-軌道相互作用を制御することに成功した。界面物性として、このようなスピン物性の制御が可能であることを示した例はこれまでになく、フォトクロミズムによる界面物性制御の用途が拡大したことを示す。 これらの成果より、有機分子の物質界面への作用について知見を得ることができ、界面物性の制御が、光制御可能な磁性体、超伝導体創製への基礎知見として有用であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である超伝導の光制御に関してはやや進捗が遅れているものの、それを実現するための基礎知見に関しては、予定より大きな成果として得ることができた。まず、白金-鉄ナノ微粒子、ならびに表面修飾によりその機能化を行うための光応答分子を用いて、それらの複合磁性材料を創製することに成功し、さらに光異性化により、大きなダイポールモーメントの変化が期待されるスピロピラン化合物で、磁性材料界面に修飾可能な末端をもつ分子を設計することで、所望のナノ微粒子を創製することに成功した。作製した微粒子は、紫外光、可視光の可逆な光異性化に伴って、非常に大きな室温強磁性の光制御に成功した。それらの変化は、これまでにアゾベンゼン等で得られた光変化より格段に大きく、本手法により、界面の化学制御が、電子物性の制御に有効であることが示された。この成果は、期待以上のものであった。 一方、界面物性の制御に関する基礎検討として、コバルト-鉄-ホウ素/銀/ビスマスの系に、表面修飾できる末端をもつフォトクロミック分子を修飾するシステムを構築した。この材料に光照射を行うことで、スピン-軌道相互作用を制御するという新しいシステムを構築した。はじめに有機分子を修飾することでそのスピン軌道相互作用は変化し、さらに、アゾベンゼンのシス-トランス光異性化に伴って、可逆にスピン-軌道相互作用を制御することに成功した。界面物性として、このようなスピン物性の制御が可能であることを示した例はこれまでになく、フォトクロミズムによる界面物性制御の用途が拡大したことを示す。 以上の成果は、当初想定していた光制御のみならず、界面物性の制御が、物性制御へ応用できる基礎知見として有用であることがわかったという点で、順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
界面物性制御として本年に成果のあった、スピン-軌道相互作用の光制御のシステムについて、次年度は、より大きな制御をめざした系の構築をめざす。そのためには、まず大きなダイポールモーメントの変化が期待できるフォトクロミック分子として、所望のスピロピラン化合物を合成し、スピン―軌道相互作用の界面制御ができる物質創製を行う。 一方で、これまでの成果から得られた基礎知見をもとに、当初の目標であった、超伝導ナノ粒子の合成とともに、フォトクロミズムによる光制御可能なシステム創製を目指す。
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