2017 Fiscal Year Annual Research Report
高導電性・高伸縮性導電性高分子の開発とソフトアクチュエータへの応用
Project/Area Number |
16H04203
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
奥崎 秀典 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60273033)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 導電性高分子 / ソフトアクチュエータ / PEDOT/PSS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)に、耐熱性と力学特性に優れたポリグリセリン(PG)を添加することでPEDOT/PSS/PGフィルムを作製し、電気・力学特性について検討した。重合度(n)の異なるPGn(n = 1, 2, 4, 6, 10)とPEDOT/PSS水分散液の混合溶液をガラス基板上にキャストし、空気中160℃で1時間乾燥・熱処理することによりPEDOT/PSS/PGnフィルムを作製した。さらに、PEDOT/PSS/PG溶液をポリウレタン(PU)とイオン液体(IL)からなるエラストマー上にスプレー塗布することにより伸縮性電極を作製し、電圧を印加しながら50%のひずみを繰り返し印加した際の抵抗値を測定した。 PEDOT/PSS/PGn(n = 1, 4, 10)の電気伝導度は、PG濃度が40 wt%以上で急激に上昇し、60 wt%で最大411 S/cmに達した。これは、PEDOTの結晶化によるキャリア移動の促進に基づく。さらにPG濃度が増加すると電気伝導度が逆に低下するのは、フィルム中のPEDOTの割合が減少したためである。そこで、PGの最適濃度を60 wt%とし、重合度について力学特性の比較を行った。フィルムのヤング率と切断強度は重合度とともに低下することから、PGの可塑効果が重合度に依存することがわかった。興味深いことに、切断伸度はPG4で最大26%に達し、フィルムが柔らかく伸びやすくなることが明らかになった。さらに、PU/IL上にPEDOT/PSS/PG4溶液をスプレー塗布することで伸縮性電極を作製した。PEDOT/PSS/PG4とPU/ILからなる伸縮性電極は50%延伸しても断線せず、最高170%まで導電性を保持していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重合度4のPG4を60 wt%添加したPEDOT/PSS/PG4フィルムの電気伝導度は411 S/cmに達し、研究目的である400 S/cm以上であることがわかった。さらに、PEDOT/PSS/PG4をエラストマー上にスプレー塗布した伸縮性電極は、最大170%まで延伸可能なことから、研究目的である100%以上の絶縁破断伸度の達成に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン伝導アクチュエータの活性層にはイオン液体/ポリウレタンゲルを用いる。ここで、極性の低いイソシアネート成分とイオン液体の溶解性が低いことが懸念されるため、ポリオール成分との組成制御可能な熱硬化性ポリウレタンを用い、イオン液体の組成をできる限り高める工夫をする。イオン液体についても、カチオンとアニオンの異なる数種類について検討し、ポリウレタンとの親和性が最も高いイオン液体をスクリーニングする。得られたイオン液体/ポリウレタンゲルは、PEDOT/PSS/PGフィルムと同様の物性評価と構造解析を行う。アクチュエータの駆動はポリウレタン中のイオン液体の移動に基づくため、イオン伝導度を高めることが不可欠である。得られたイオン液体/ポリウレタンゲルを、PEDOT/PSS/PGからなる高伸縮性・高導電性電極で挟むことで、アクチュエータ素子を作製する。 作製した素子のアクチュエータ特性は、恒温恒湿槽とレーザー変位計を組み合わせた既設の装置を用いて行う。高速カメラと解析ソフトを用い、高周波数領域におけるアクチュエータの微小変位についても高精度に測定する。アクチュエータの屈曲変形を画像解析し、曲率半径を算出することでアノード側とカソード側のゲルの変位差を求める。同時に、電流電圧特性の時間変化をADコンバータを用いてPCに取り込み、応答速度、発生応力出力密度、エネルギー変換効率、耐久性等を系統的に評価する。これらの実験結果から、アクチュエータ素子の駆動メカニズムを明らかにするとともに、劣化機構に関する情報を得る。 本研究成果の公表は、国内学会や国際学会、学術論文、プロシーディング、著書、総説・解説ならびに公開講座や展示会、出前講義を通じて積極的に行う。
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Research Products
(21 results)