2017 Fiscal Year Annual Research Report
高分子のガラス転移温度を光により巨大変化させることが可能な分子システムの構築
Project/Area Number |
16H04208
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 貴広 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70392678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木原 秀元 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (60282597)
高橋 和義 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (60645208)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子 / 液晶 / 光可塑 / 粘着 / 接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発したアゾベンゼン添加液晶を用いた高分子の光可塑化について,その適用可能な高分子の範囲を調べるため,非晶性高分子であるポリメタクリル酸メチル,ポリスチレン,ポリビニルピロリドン,結晶性高分子であるポリエチレン(PE,結晶化度 = 27%),ポリカプロラクトン(PCL,結晶化度 = 59%)を用いて複合樹脂を作製し,光可塑化挙動を調べた.非晶性高分子を用いた複合樹脂はすべて,アゾベンゼン添加液晶が高分子と相分離した状態において光可塑化を誘起できることを確認した.一方,結晶性高分子については,PEはアゾベンゼン添加液晶と相溶性せず,複合樹脂を作製できなかった.PCLは非晶性高分子の場合と同様に,アゾベンゼン添加液晶の含有量が一定量以上になると高分子と相分離した複合樹脂を作製することができた.しかし,光可塑化は確認できなかった.これは,アゾベンゼン添加液晶はPCLの非晶部分と複合化し樹脂を形成しているが,結晶部分の分子配向は強固であるためアゾベンゼン添加液晶と相溶せず,光により非晶部分が可塑化されても結晶部分が強固な構造を維持しているため,全体としては光可塑の効果が現れなかったためと考えられる. 次に,光可塑化を確認できた複合樹脂について,光可塑化後の樹脂の粘着性をタック測定により評価したところ,タックは樹脂のガラス転移が開始する温度付近で発現し,ガラス-ゴム転移領域とゴム領域の境界温度付近で最大値となった.これは,光可塑化によってゴム部分が粘着性を発現し,ガラス部分が樹脂形状の維持を担っているためであると推察した. また,複合樹脂のための粗視化分子動力学計算プログラムに改良を施し、液晶の双極子モーメントを新たな分子パラメータとして組み込んだ。異なる双極子モーメント値に対して液晶のオーダーパラメータの温度依存性を算出し、その差異を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発した高分子とアゾベンゼン添加液晶からなる複合樹脂における高分子に対するアゾベンゼン添加液晶の相溶性を光で変調することに基づく高分子の光可塑化について,技術の一般性や汎用性について着実に知見を蓄積できている.また,本技術を利用した光応答性粘着剤を応用の1つとして特性評価を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
高分子のガラス転移温度の巨大な光変化について,ガラス転移温度の降下だけでなく,上昇させる機構についても視野を拡げて研究を推進し,現時点で応用として想定している粘着・接着を高付加価値化する技術を創製する.また,前年度までに構築しているシミュレーション環境を有効活用して新規光応答性化合物の分子設計を行う.
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