2016 Fiscal Year Annual Research Report
次世代水素利用技術の安全性確保のための高温水素環境における材料強度劣化現象の解明
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16H04237
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保田 祐信 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (50284534)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 次世代水素利用 / 高温 / 機械材料・材料力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,SOFC, SOEC, 水素ガスタービンなどの次世代水素利用機器で共通のキーワードとなる高温水素環境に着目し,現状知見の不足が著しい高温水素中の材料強度劣化について,現象の把握と劣化機構の解明を目的とする.この目的のためには,高温水素中で材料試験を実施できる装置の開発が第1の課題であり,第1年度はこの課題に取り組んだ.高温の水素を取り扱いには,安全の確保が何よりも優先する.そのため,目的や実験条件が本研究とは異なるが,高温と水素の両方が関係する研究を実施している機関(原子力関係)を訪問し,試験機製作の参考とした.さらに,高温の試験を得意とする研究機関を訪問し,高温環境中での計測手法を勉強した.試験装置は,高圧水素中材料試験機の製作に実績のある試験機メーカーと共同で開発にあたっているが,当初の予想よりも技術的に困難であることが次第に明らかとなり,本年度は何とか試験機の導入ができたという段階で年度末を迎えることになった.予定では,年度内に試験機の試運転と試験手順を確立し,数回のSSRT試験を実施することになっていたが,そのスケジュールを果たすことができなかった.次年度に入っても,想定した条件で試験機を稼働するための改良に約2ヶ月を要する見込みであり,今期はまずスケジュールの遅れを取り戻すよう最大限努力する.ただし,この遅れは,高温水素中で材料試験を実施する技術がいかに困難であるかを示すものであり,次世代水素機器の安全性確保のためにはやはり本研究による開発が大いに寄与できるものと考えている.本年度は,実際に高温水素機器を開発中の機器メーカーとも情報交換を行うことができ,次年度の実験条件を決める参考となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は高温水素中で材料試験が実施できる試験装置の開発と試運転,試験手順の確立が予定したスケジュールであったが,現在の所,想定した試験条件で安定した試験が行えるようには装置的に不十分な状態であり,スケジュールはやや遅れているといえる.試験機の開発の遅れは,高温水素の取り扱いが非常に難しいことに原因がある.試験機を構成するいろいろな要素には開発的要素が含まれており,昨年度立てた予定はいろいろな開発要素がすべて順調であった場合ととらえている.以下に今年度行った開発について述べる.ガスを600℃まで加熱する方式は高周波,赤外線,鋳込みヒーターなどが考えられたが,均一な加熱と安全性,費用を考慮して,鋳込みヒーターを製作した.水素ではない高温環境であればステンレスシースの熱電対で温度測定が可能であるところ,水素がシースを透過する恐れがあり熱電対に対する影響を検討した.高温水素の漏洩防止の方法については,シール部分を高温部から分離する方式を採用したが,そのためには当初溶接ベローズを採用する予定であったが,部品の性能と試験条件を精査して成形ベローズの採用に踏み切った.これにより,部品製作の期間を大幅に短縮できた.未だ少し時間を要するが,試験機に関わるいろいろな問題については解決の見込みであり,できるだけ早期に試験機を安全に安定して取り扱えるようにして,実験を開始する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,引き続き試験機の開発を実施し,試験技術の確立に注力する.これらを達成するには,新年度に2ヶ月の期間を予定している.実験の第1段階は,加熱した水素を保持する時間が短時間で済むSSRT試験を実施する.供試材は,高温水素機器開発メーカーへのヒアリングによりオーステナイト系ステンレス鋼とする.現在の所,水素の影響が現れる条件が不明であるので,SSRT試験の結果を見極めて,SSRT試験を継続するか,クリープ試験に移行するかを判断する.クリープ試験については,500時間から1000時間を目処に実験を実施する.
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