2017 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光発光標識法と摩擦面直接観察によるDLC膜の摩耗に及ぼす潤滑油添加剤の影響解明
Project/Area Number |
16H04252
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野老山 貴行 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20432247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月山 陽介 新潟大学, 自然科学系, 助教 (00533639)
山口 誠 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (90329863)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DLC / in-situ / MoDTC / エンジン油 / 添加剤 / Mo2C / MoO3 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素系皇室薄膜であるDLC幕は低摩擦,高い耐摩耗性,低相手攻撃性などの優れた特徴を有する.科学的不活性であるはずのDLC膜だが,エンジン油のような多くの添加剤を含む潤滑条件下において,非常に摩耗が促進する状況が発生している.特に添加剤のトライボケミカル反応に伴い生成される粒子あるいは酸化物が摩擦面内にかみこまれることで,摩耗を非常に促進している可能性がある.現在市場で使用されている有機金属元素を含む添加剤として硫黄,リン,亜鉛の使用量を減少させることが欧州を中心として促進されており,代替添加剤とDLC膜との摩擦面内トライボケミカル反応およびDLC膜の結晶構造変化への酸化物,粒子形状の影響は全く定かにされていない.これまでの研究成果を踏まえ,摩耗粒子自己発光のための蛍光染色と顕微鏡観察システムへの紫外~可視光入射可能な装置組み込み及び摩擦面内の観察と粒子挙動の撮影手法の確立を行った. 代替摩耗粒子として純モリブデン(Mo),モリブデンカーバイド(Mo2C),固体モリブデンジチオカーバメイト(MoDTC),二硫化モリブデン(MoS2),三酸化モリブデン(MoO3)を含む潤滑油中での摩擦試験結果からa-C:H膜の摩耗促進にはMo2Cによるアブレシブ摩耗,MoDTC自体による化学腐食摩耗の順に摩耗量が多く,MoO3,Mo,MoS2による摩耗量は少ないことが明らかにされた.しかし,添加剤として含まれる液体のMoDTCがトライボケミカル反応により反応分解してMo2Cになるまでの時間を考慮すると,a-C:H膜の初期摩耗にはMoDTC自体の化学腐食摩耗が最も大きな影響を与えているものと示唆される結果が得られた.今後,摩擦面内へのMoDTC粒子の挟み込み量,接触面積などの直接観察が重要となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに各種模擬摩耗粒子へのローダミンによる染色および境界潤滑条件下における摩擦試験,摩耗量の測定手法の確立までが完成している.摩擦面内から発生する微弱なラマン光を測定可能とするため,532 nmレーザをライトガイド軽油にて摩擦面内に導入し,得られるラマン光を装置付属の光速度CCDカメラに導入する.この際,オプトライン社製のレーザラインフィルタ(中心波長491 nm及び514 nm)をカメラと観察視野との間に挿入して1330 cm-1及び1580cm-1を中心波長とする画像の取得を行い,動画にてマッピングラマンが可能となるように装置改良を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
研究申請時に検討していた(Ⅰ)模擬摩耗粒子の蛍光染色,(Ⅱ)その粒子による動的画像取得,(Ⅲ)及び(Ⅳ)フィルタ操作による各種金属元素がDLC膜の摩耗に及ぼす影響について最終的なデータ測定が可能な状態になったが,DLC膜自体から摩耗粒子が発生した状況をリアルタイムに得ることは依然として難しい.そこで,本年度はDLC膜への傾向染色剤導入を試みる.電子ビーム蒸着法は真空チャンバ内に設置されたカーボンターゲットに電子ビームを照射して,蒸発~基板に到達して成膜される手法である.この電子ビームの走査範囲内に傾向染色を施したOLC(オニオンライクカーボン)を埋没させ,同時に成膜を行う.また,DLC膜には大別して水素含有及び非含有が存在するため,電子ビーム蒸着法では水素非含有DLC膜を作製し,一方の水素含有DLC膜への傾向染色剤導入には,テトラメチルシランへの蛍光物質混合による同時成膜を行うことで実現できる可能性を明らかにする.
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