2016 Fiscal Year Annual Research Report
硬質炭素膜の超高速成膜と超低摩擦の両立に向けた学術基盤の構築
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16H04256
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
上坂 裕之 岐阜大学, 工学部, 教授 (90362318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 貴之 名城大学, 理工学部, 准教授 (10379612)
小田 昭紀 千葉工業大学, 工学部, 教授 (70335090)
村島 基之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70779389)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超高速成膜 / シリコン含有ダイヤモンドライクカーボン膜 / 超低摩擦 / トライボロジー / プラズマ気相蒸着 / スパッタリング / プラズマシミュレーション / 表面分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
現時点で超高速成膜が可能な唯一のDLC膜種であるシリコン含有DLC(Si-DLC)膜を対象として以下を行った. 1.超高速成膜されたSi-DLC膜のうち超低摩擦に近づくもしくは発現する膜とそうならない膜との間にある膜構造の違いを詳細な表面分析(ラマン,XPS,RBS-ERDAなど)により明らかにすることを目指した.その結果、シリコン含有量が5.5%以上のSi-DLC膜に対して,水素含有量が26~33.5 at%の範囲で増加するに伴って摩擦係数が0.3から0.025に低下する傾向を見出した.また,分担者の太田がスパッタにより作成するSi-DLC膜を実験対象に含めることを目的として,シリコンと炭素の二元スパッタが可能な装置を立ち上げた. 2.超高速DLC成膜時のプラズマ‐基板界面状態を明らかにすることを目的として,これまで超高速成膜を行ってきたプラズマCVD装置に,発光分光計測装置,プラズマ密度計測装置(ラングミュアプローブ),プラズマ気相FTIR分析装置などを取り付け,計測を行った. 3.プラズマ気相のFTIR吸収スペクトルなどから精度よくプラズマ‐基板界面状態を同定するには,プラズマシミ ュレーションを併用して,気相中の主たるイオン・ラジカル種を予想することが望ましい.そこで分担者の小田によりプラズマシミュレーションを行った.ただし従来は炭化水素にのみしか対応していなかったためTMSを取り扱う超高速DLC成膜には対応していなかった.そこで,化学反応モデルにTMSのイオン化反応を組み入れ,それを用いたシミュレーションを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,現時点で超高速成膜が可能な唯一のDLC膜種であるシリコン含有DLC(Si-DLC)膜を対象として行う以外にない.初年度に、摩擦係数が0.01未満の超低摩擦となりうるSi-DLC膜を探索・発見する予定であった。しかしながら,摩擦係数が0.025を下回る実験結果は得られていない。その点が現時点で予定外のことである.しかしながらSi-DLCの摩擦係数が水素の含有増加により低減する明確な相関を発見したため,今後の低摩擦化のための成膜指針が得られた.よって今後早期に超低摩擦となりうるSi-DLC膜を発見出来ると考えている.それ以外は,計測装置やスパッタ装置の立ち上げ、シミュレーションコードの開発など順調に推移しており上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,現時点で超高速成膜が可能な唯一のDLC膜種であるシリコン含有DLC(Si-DLC)膜を対象として行う以外にない.初年度にSi-DLCの摩擦係数が水素含有量の増加により低減する明確な相関を発見したため,次年度以降は膜中の水素量を自在に増加させることが重要となる.代表者は過去に,表面波プラズマを用いたプラズマCVDによる高速のDLC成膜において,アセチレン/テトラメチルシランの流量比増加により,Si-DLCへの40at%程度までの水素含有を実現している.現時点で用いている超高速成膜装置も,プラズマCVD方式であり,すでにアセチレンとテトラメチルシランのフローラインを備えている.従って過去の知見をもとに速やかに高い水素含有量のSi-DLC膜を得るように努める.
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