2017 Fiscal Year Annual Research Report
臨界点を跨ぐ超臨界流体中におけるマルチフィジックス熱流動のメカニズム解明
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16H04261
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 悟 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (90192799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古澤 卓 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (80637710)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 数値流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度においては、以下の研究を実施した。 1.本研究で開発した高温・高圧環境における非平衡凝縮が正確に計算できる数理モデルを組み込んだ超臨界二酸化炭素熱流動の数値解法を用いて、MITが発表した遷音速ノズルを通る超臨界二酸化炭素熱流動の実験における非平衡凝縮現象を数値計算で再現することに成功した。本実験は、超臨界二酸化炭素を作動流体とする超臨界二酸化炭素発電用圧縮機内の翼列流路を模擬したものであり、実験により捕獲された二酸化炭素の非平衡凝縮を数値計算によっても確認することができたことから、本発電装置の開発において重要な知見を与えることができた。本研究の成果は、2018年3月に開催された第6回超臨界CO2発電サイクル国際シンポジウムで発表した。 2.JAXAからオクタンを用いた超臨界炭化水素熱流動の実験データを入手して、超臨界炭化水素熱流動の数値計算を実施した。その結果、化学反応が生じない温度域における計算では実験で得られた温度分布を良好に再現できることが分かったが、化学反応が起きるようなより高温域においては、化学反応による炭化水素の分解を考慮することが不可欠であることを把握したことから、来年度以降オクタンの化学反応をどのように考慮するか検討する必要がある。 3.RESSプロセスにおける非定常超臨界二酸化炭素流動の解明に高温・高圧環境における非平衡凝縮が正確に計算できる数理モデルを組み込んだ数値計算を実施した。しかしながら、現状では、妥当と思われる高分子物質の核生成が求められる段階にはなっていない。 4.1.-3.と並行して、超臨界流体の三次元熱流動が計算できるプログラムの構築を進め、超臨界水ならびに超臨界二酸化炭素の強制対流や自然対流を計算して、結果の妥当性を検証した。その研究成果は、10月に沖縄で開催された日韓熱流体工学会議や数値流体力学シンポジウムで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超臨界二酸化炭素の非平衡凝縮現象の解明において、MITの実験により報告されている現象を数値計算によっても再現することができ、本研究における大きな成果である。特に従来の手法ではそもそも数値計算では捕獲することができなかった現象の存在を確認した点は学術的に意義が高い。また、超臨界流体の三次元熱流動が計算できるプログラムの開発が進み、超臨界水ならびに超臨界二酸化炭素の強制対流や自然対流が計算できるようになった。一方、超臨界炭化水素の熱流動計算では、新たに炭化水素の化学反応による熱分解を考慮する必要性が明らかとなり、今度の課題である。また、RESSプロセスの再計算においても、非定常流動が高分子物質の核生成計算に影響を与えるという想定外のところで問題が発生したため、今後原因を解明する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
超臨界二酸化炭素の非平衡凝縮現象の捕獲については、実験との検証により本研究における手法の信頼性が確認されたことから、今後は具体的な遷音速圧縮機翼列流れを想定した問題へと展開する。超臨界炭化水素の熱流動解明においては、本来複雑な炭化水素の化学反応を如何に簡略化して本手法に組み込めるかを探求することになる。RESSプロセスにおいては、現在軸対象を仮定して計算している問題を三次元に拡張して計算するなどの方策も考えられる。
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