2016 Fiscal Year Annual Research Report
PEM形燃料電池内のナノスケール水輸送現象観察と高性能電池構造の解明
Project/Area Number |
16H04272
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近久 武美 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00155300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田部 豊 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80374578)
大島 伸行 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10217135)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱工学 / 燃料電池 / 固体高分子 / 二相流 / 生成水 |
Outline of Annual Research Achievements |
燃料電池の性能を左右する主要因子として、流路から白金触媒粒子表面に至るまでの酸素輸送抵抗がある。GDL内の分子拡散や触媒層内イオノマー表面の溶解抵抗等を含む各種酸素拡散抵抗を4つの要素に分解し、解析モデルと実験計測結果の比較から、特に影響の大きな2つの要素を特定することができた。その結果、触媒中の白金使用量を少なくしながら性能を維持するには、カーボン粒子に対する白金担持量を少なくし、かつ触媒層を厚くすることが有効であることが示唆された。 一方、複雑繊維構造を持つGDL内の凝縮水挙動を明らかにするために、実機とキャピラリー数や重力効果を同様に保ちながら約300倍に拡大したスケールモデルを用いて実験・観察する手法を確立したほか、格子ボルツマン(LBM)計算の高速化を行った。次にこの両手法を用いて複雑繊維構造中の凝縮水挙動を解析した結果、空孔径分布や濡れ性に対する凝縮水移動の特徴を把握することができた。これらの知見より、セパレータリブ下の滞留水をスムーズに排出するためのGDL繊維の配向性や濡れ性分布設計に関する知見が得られた。 また、Cryo-SEMを用いた凝縮水分布の凍結固定化観察法によって、異なった濡れ性ならびに形状を有するMPLのフラッディング影響特性を比較した結果、繊維形状を有した親水性のMPLの方が、従来の疎水性・粒子状MPLよりも触媒層の排水特性が良好となることが示された。 なお、Cryo-SEM観察において凍結固定化過程における凝縮水移動の有無を確認する目的で、中性子ラジオグラフィ法との比較を行う予定であったが、装置の問題等で実施することができなかった。この点については次年度においてX線-CT 法を用いた観察との比較を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子を用いたラジオグラフィ計測はできなかったが、その他の項目委については予定通り、もしくは予定よりも良好に進展しており、全体として概ね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Cryo-SEMを用いた凍結固定化法の妥当性を確認する目的で、当初計画していた中性子ラジオグラフィによる観察の代わりに、X線CT計測法による観察結果との比較を試みる計画である。これにより、凍結固定期間中に凝縮水の移動は殆ど生じておらず、Cryo-SEMで観察された映像が、運転停止直後の凝縮水分布と一致することを確認したいと考えている。 また、本年度の研究によって触媒中の白金使用量を少なくしながら性能を維持するには、カーボン粒子に対する白金担持量を少なくし、かつ触媒層を厚くすることが有効と推定された。そこで次年度はこの確認実験を行うほか、Cryo-SEMで触媒層中の反応分布(凍結水量から判定)を観察し、モデル解析と比較しながら、この妥当性を確認する。 一方、本年度開発した拡大スケールモデル実験法ならびに高速格子ボルツマン(LBM)計算を用いて、凝縮水を速やかにGDLからチャネルに排出するための繊維構造ならびに濡れ性分布について解析を行う計画である。併せて、MPLについても濡れ性や構造影響についてCryo-SEMを用いた研究を行う。 さらに、燃料電池の氷点下起動特性の改善を目的として、マルチスケールの熱流体数値シミュレーション法を用いて氷点下起動を改善するための電池構造に関して解析を行おうと計画している。
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