2016 Fiscal Year Annual Research Report
Control of thermal transport by advanced spectral phonon engineering
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16H04274
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 淳一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40451786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 拓麿 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10730088)
内田 健一 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50633541)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱工学 / フォノンエンジニアリング / 熱輸送制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォノンの粒子的振る舞いの科学に加えて,フォノンの波動性に着目し,干渉や回折によって熱伝導率を低減する構造を検討した.波動的特性を発現するには,干渉する波がコヒーレントである(位相に一定の関係がある)必要がある.そこで,原子レベルからフォノンの波動性を評価する理論・数値解析手法を開発して,周期構造などのフォノン波の基礎物性を明らかにした.具体的には,分子動力学法を用いてナノスケール構造の片側で励起したフォノンが伝播される際の相互相関を計算することによってフォノンのコヒーレント長(位相緩和長)を計算した.計算はフォノン・フォノン散乱や界面フォノン散乱などの基礎的な散乱過程も含めて行い,フォノンの波動的特性を発現し得る構造の長さスケールを同定した.また,グリーン関数法を用いて,内部ナノ構造によって誘起させるフォノンの干渉・共鳴効果について解析した.それらをもとに,フォノンの干渉によって生じるフォノン・バンドギャップや分散の局所化が熱伝導率に与えるインパクトを評価した. 格子動力学のもとづくマルチスケールフォノン解析により,周期性などを有するナノ構造体の熱伝導スペクトルを計算した.代表的なパラメータ(各層の厚さ,粒径,材料種など)の組み合わせに対して,目的の熱伝導スペクトルを形成するのに最適な構造を同定した.この際,適宜,機械学習的な手法も取り入れ,構造パラメータを記述子とした回帰法によって効率的に最適化した.これまで導出した設計指針にもとづき,ナノスケール構造を作製した.作製した薄膜試料に対して,申請者らが有する時間領域サーモリフレクタンス法や3ω法を用いて,熱伝導率の温度依存性を測定した.試料温度を大幅に変えられるチャンバーを用いて温度依存性を測定し,設計どおりの温度依存性が得られているかを検証できるようにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フォノンの波動性も考慮したフォノン輸送解析を通じて,その基礎物性や制御性を明らかにし,目的である熱伝導スペクトルの制御性に関する新たな自由度を見出した.また,これらを実証するための試料作製や計測に着手しており,研究はおおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
フォノンの熱伝導スペクトル制御が狙い通りにできていることを実証するために,熱伝導スペクトルを実験によって直接計測する.基本原理としては,フォノンの平均自由行程と同等または小さいスケールで加熱・測温領域のサイズを変化させながら熱伝導率を計測し,そのサイズ依存性から熱伝導スペクトルを求める.時間領域サーモリフレクタンス法のレーザー光のスポット径を変える従来法では,分解能が光の回折限界に制限されていたが,申請者らは試料表面に形成した金ナノアイランドの局在表面プラズモン共鳴を利用して,金ナノアイランドのみでレーザー光を吸収・反射することによって,数十ナノメートルの加熱・測温領域による測定を実現している.今年度の研究では,さらに簡便かつ高精度の計測を実現するために,リソグラフィーによってパターニングした表面金属層を用いた手法に発展させる.また,レーザー光の変調周波数を変えることによって熱浸透深さを変化させて加熱・測温領域を制御する周波数領域サーモリフレクタンス法も構築する. 熱電変換効率は無次元性能指数で一意に決まり,ゼーベック係数と電気伝導率が大きく,熱伝導率が小さい程大きくなる.フォノンの粒子性を利用して,界面散乱等で熱伝導率を低減することに加えて,フォノンの散乱,干渉,共鳴効果の相補性を意識して,より高度なナノ構造により熱伝導のスペクトル制御を行うことによって,構造の散乱断面積を最大化せずとも,電子を輸送するチャネルを確保する.具体的には,多階層スケールのナノ粒界,ナノドット,ナノ空孔に配置されている構造を用いてフォノン輸送を低減させると同時に,ナノ構造の隙間を通じて電子が波動関数を連続に保ちながら輸送されるようにする.このために,フォノンマルチスケールシミュレーションを用いて設計した構造を作製し,異方性も含めた熱・電気測定により性能を評価する.
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Research Products
(16 results)