2017 Fiscal Year Annual Research Report
吸着蓄熱による未利用熱の時空間濃縮とプラスチック射出成形金型温度制御への適用
Project/Area Number |
16H04275
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 勲 東京工業大学, 工学院, 教授 (10170721)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 卓志 東京工業大学, 工学院, 准教授 (20302937)
川口 達也 東京工業大学, 工学院, 助教 (40376942)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エネルギー工学 / 吸着蓄熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の第二年度には、未利用熱エネルギーを用いてデシカントを再生するための蓄熱部の性能評価を行った。デシカント再生を行う蓄熱部は、利用する未利用熱エネルギーの形態や温度レベルによって最適な構成が異なるが、本研究においては低温廃熱(温度100~200℃程度)を想定し、粉体であるデシカントを流動物質とする流動層による再生蓄熱部を構築して、デシカントの再生性能に対する種々の運転条件の影響を実験的に検討した。 その結果、流動層を加熱するために投入した熱エネルギーのうちデシカント再生に用いられたエネルギーの割合(熱回収率)は、流動層の流動化気体流速、流動粒子の加熱温度、投入量などによって変化することが明らかになった。すなわち、供試デシカントとして粒径約2 mmのゼオライト(モレキュラーシーブ4A)を用いた本実験の範囲では、流動化気体流速を増加させていくと、再生時間は若干短縮できるものの、流動化気体の熱輸送による損失が増加して、熱回収率は最大値をとった後に減少に転じる。流動粒子の加熱温度については、170℃以上であれば再生挙動に対する影響は大きくないが、高温の場合に若干熱回収率が向上する様子が見られた。一方、デシカント投入量は再生挙動に大きく影響し、特に粒子量を過度に大きくすると流動化状態が変化するため、再生に要する時間が延びるだけでなく、熱回収率も顕著に低下することが示された。これらの検討の結果、本実験条件では、流動化気体流速を流動化開始速度の2.15倍、流動粒子加熱温度を190℃、流動層単位断面積あたりの粒子投入量を26.7 kg/m2としたとき、熱回収量は31.2%の最大値をとることが明らかとなった。また、この方法によって再生されたデシカントは、湿分吸着による再度の発熱後、繰り返し再生しても、発熱性能に劣化はみられず、金型加熱熱源として実用可能であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の欄でも述べたとおり、本年度の目的である未利用熱エネルギーを利用したデシカントの再生について、流動層を用いた再生装置を構築し、その性能を実験的に検討して、再生性能に与える各種運転条件の影響を把握することができた。また、こうして再生したデシカントが繰り返し利用可能であることも明らかにした。さらに、昨年度の検討から得られた知見に基づき、流動層による再生直後にデシカントをカセット化すれば、輸送中の湿分吸着による熱損失も抑制できる可能性が見出せた。なお、これらの検討に際して本研究グループが保有する計測システム等を効率的に利用することができたため、研究経費に残額が生じているが、研究計画遂行上に制約は生じていない。 本研究の最終目標である実際の金型温調システムへの適用については、カセット化したデシカントの移送や金型組み込みに要する時間の生産性への影響など、検討すべき内容が残っているが、これらについては当初計画通り、第三年度に評価することで、当初の目的が達成できるものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度・第二年度の検討の結果、デシカントをカセット化することによる金型急速加熱とデシカント輸送簡易化の両立、流動層によるデシカント再生性能を左右する運転条件等を明らかにすることができた。最終年度である第三年度には、これらの知見をもとに、急速加熱機構を内包した金型とデシカントへの蓄熱部、金型・蓄熱部間のデシカント輸送系を接続し、実際の射出成形条件の時間的制約の中での性能評価を行う。 実成形プロセスでは、一定の射出成形工程サイクルの中で、材料樹脂の溶融、金型への充填、型内での冷却、型開きによる成形品取り出しが繰り返されている。成形品品位向上のために金型温度を上昇させるのは、このうち、型開き後、金型への溶融樹脂充填までの間で、典型的には数~10数秒程度の間に昇温を済ませないと、成形サイクル時間の延長、すなわち生産性の低下を招く。一方、成形サイクル中最も長いのは冷却工程で、その時間は成形品の形状やサイズによるが、典型的には数10秒~1分程度である。したがって、本システムによって未利用熱エネルギーを金型動的温度制御に有効利用するためには、冷却工程中に放熱後のデシカントの輸送、デシカントの再生、金型への最充填を済ませる必要がある。こうした時間的制約の中で、本システムの三要素を有機的に連携して動作させるための基礎的条件を実験を通して明らかにするとともに、生産性への影響を最小にするために必要なそれぞれの要素(金型、蓄熱部、輸送システム)の性能要件を検討する。
|