2017 Fiscal Year Annual Research Report
熱療法を指向した高温環境条件での細胞挙動のダイナミクスとその高精度速度論的モデル
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16H04281
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
石黒 博 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (30176177)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱工学 / バイオ熱工学 / 温度環境 / 細胞挙動 / 形態変化 / ダイナミクス / 数学モデル / 逆問題解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
一定温度に保持された、培地中の基質上の付着細胞に対して、デジタルホログラフィー顕微鏡を用いた3次元的・タイムラプス撮影を行い、細胞の形態変化の定性的・定量的・統計的特性を調べると共に、温度の影響を解明した。温度条件は、通常の培養条件の37℃、および、高温の40.0~47.5℃までの7通り(40.0, 41.0, 42.0, 43.0, 44.0, 45.0, 47.5℃)で、計8通りとした。また、細胞損傷・死滅に関して、細胞分裂がなく、細胞は、不可逆的球状化、ブレブ形成を経て形態崩壊に至る過程に対して、速度論的モデル化を展開した。さらに、不可逆的球状化、ブレブ形成、形態崩壊する各細胞数割合の時系列変化の実験結果に基づいた逆問題解析により、当該形態変化の速度定数を決定した。具体的には、 1) 細胞の特徴的な挙動は、正常な挙動(変形、移動、分裂)と損傷・死滅に関わる挙動(不可逆的球状化、次いでブレブ形成を経て、形態崩壊に至る)に大別される。37.0℃では、正常な挙動が盛んである。高温ストレス状態(40.0~47.5℃)では、基本的傾向として、温度上昇と共に、正常な挙動が減少・消滅するのに対して、逆に、損傷・死滅に関わる挙動が出現・増加する。その変化の境界温度は概ね42~43℃であり、43.0℃以上では細胞増殖は停止する。44℃以上では損傷・死滅挙動が支配的である。また、形態崩壊が出現する42℃では、明瞭な細胞質の小体形成を伴うアポトーシスが起こり、ネクローシスと共存する。 2) 形態変化のダイナミクスにおける細胞数変化を数学的に記述するための速度論的モデル化を提案・展開した。細胞数変化の実験結果に基づく逆問題解析から,モデルパラメータ(形態変化の速度定数)を決定すると共に、実験結果とモデルによる計算結果の比較から、モデルの妥当性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概して問題なく進行しているが、細胞の形態変化のダイナミクスに関して、定性的特性、定量的特性、統計的特性を調べるために要する手間や労力、時間が、予想以上であったため、量的に少し遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 細胞挙動のダイナミクスを、高温環境だけでなく、低温に及ぶ広範な温度範囲に渡って、定性的・定量的・統計的に解明する。 2) 細胞の生存率を、一連の形態変化過程の中で検討する。 3) 高温、生理的温度、低温の温度範囲での事象を、統一的に、数学的に記述する高精度の速度論的モデルを提案・展開する。 4) 細胞の形態変化特性に対する抗酸化作用を有する添加剤の効果を解明する。
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