2016 Fiscal Year Annual Research Report
フォノンエンジニアリングによるグラフェンヘテロ構造デバイスの環境発電への新展開
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16H04283
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
有江 隆之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80533017)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グラフェン / フォノンエンジニアリング / 熱伝導率 / 熱電変換 / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェン内に質量の異なる同位体炭素を導入すると、フォノンの散乱が促進され、結果としてフォノンをキャリアとする熱の伝導が抑制される。同位体をランダムに導入したグラフェンと比較し、任意に同位体を配置し、異なる同位体のヘテロ界面を作製すると、フォノンの周波数が界面でずれるため、さらなる熱伝導率の低下が期待できる。 今年度は大幅なフォノン変調に向け、従来のフォトリソグラフィと酸素プラズマからなるトップダウン合成に代え、ガスのシーケンシャルな導入が可能な装置を構築し、ボトムアップ合成による同位体ヘテロ構造の作製を行った。ヘテロ構造の周期はガスの流入時間と流入回数により任意に調整可能であり、フォノン伝導の制御性の向上が期待できる。 ボトムアップ合成により作製したグラフェンは、従来のトップダウン合成と比較して、電界効果移動度が500cm2/Vs程度から3,000cm2/Vsまで向上した。これは作製したグラフェンが単結晶からなり、異なる同位体グラフェンの界面が電気的にも良好に接合していることを表している。 ボトムアップ合成により作製したヘテロ界面を有する単結晶グラフェンの熱伝導率をラマン分光法により測定した。単一の同位体炭素からなるグラフェンでは、熱伝導率はおよそ2,000W/mKで現在報告されているグラフェンの値と同程度であるのに対し、ヘテロ界面の導入により熱伝導率が35%(1界面)、50%(2界面)減少した。さらなる界面の導入でより大幅な熱伝導率の低減が期待できる。今後は界面状態の評価とともに、周期構造としたときのフォノンの波動性を生かした制御性の向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、今年度はボトムアップ合成法の確立と周期ヘテロ構造の作製、熱、電気特性評価を行った。ボトムアップ合成ではヘテロ界面を有する単結晶グラフェンが再現よく作製可能であり、これは当初の期待以上であった。このため電気特性は飛躍的に向上し、他方、界面構造の増加により熱伝導率が大幅に低下していくことも確認した。これらの成果はグラフェンという物質を、熱電変換デバイスに応用するための基盤となる重要な知見であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところ研究は順調に推移しており、今後も計画通り周期ヘテロ構造の作製と評価を行っていく。特に前年度末に導入したプローバーによる熱電特性の評価は、熱電変換デバイス応用には必要不可欠な知見を与えると期待している。熱キャリアであるフォノンの伝導制御に関しては、実験と理論の両面から最適な構造を模索していく。
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