2017 Fiscal Year Annual Research Report
非接触レーザー加振システムによる機械/生体システムの動特性評価および異常診断
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16H04286
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
梶原 逸朗 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60224416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 俊朗 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30270812)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機械力学・制御 / 振動解析・試験 / 非接触レーザー加振 / 損傷検知 / インパルス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高出力レーザーによる音響加振システムを応用し,内部空間を有する構造物に対する簡易なヘルスモニタリングとして,閉空間内部の異物検知システムの構築を検討した.構造物外部からのアクセスが難しい閉空間内部に対してレーザー音響加振を用いることで,外部からのヘルスモニタリングを行う方法を開発した.対象構造物には,アクリル製のボックスを用い,LIBによる音響加振,マイクロホンによる音響計測によって音圧の周波数応答を計測した.本研究では,得られたパワースペクトルに対し,RT法を適用し,異物の有無による特性変化を定量的に分析することで,閉空間内部の異物を検知する検討を行った.そして,損傷の判別にRT法を用いることで,簡易的なヘルスモニタリングを可能にした.また,位置条件の異なる場合においても損傷検知を試み,それぞれの特性変化の特徴を比較することで,簡易かつ効率的な損傷位置の特定を実現した. 次に,本手法のインフラ分野へ応用を検討すべく,コンクリート構造の損傷検知について検討を行った.空洞部分をもつ状態のコンクリートブロックをLIBにより加振し,パワースペクトルを計測した.その結果,空洞部分において低周波領域のパワースペクトルが増大し,健全部分との判別が可能であることを確認した.また,実験装置を台車に乗せ,さまざまな実験条件において移動しながら加振・計測を行い,パワースペクトルによる損傷検知の実現可能性を検討した.その結果,移動時における損傷検知では,台車からの外乱による振動入力が大きいため,レーザー加振による振動計測のS/N比が劣化し,損傷検知に悪影響を及ぼすことが判明した.次年度に,計測におけるS/N比を改善する方法を検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度における研究計画・方法の概要は,レーザーアブレーション(LA)およびレーザーブレイクダウン(LIB)を用いた非接触インパルス加振法に基づく振動計測技術を高度化させ,さまざまな先端機械システムの特性・性能評価のみならず,従来技術では不可能であった対象・分野の振動計測およびモニタリングを可能にすることである. 機械システムにおける内部の損傷検知,およびインフラ構造物における閉空間内の損傷検知を実現すべく,高出力のNd:YAGパルスレーザーを用いたレーザー誘起プラズマによる音響加振に基づき,閉空間内の異物検出を可能とするヘルスモニタリングシステムを構築した.本損傷検知法では,閉空間内でレーザー誘起プラズマによって点音源を生成することで非接触音響加振を行い,マイクロホンの計測により閉空間内のある点における音圧を測定し,そのフーリエスペクトルを解析した.そして,RT(Recognition Taguchi)法を用い,異物の有無によるフーリエスペクトルの変化を抽出することで異物を識別した.RT法の適用に際し,複数回計測された異物の無い状態のデータから統計的処理によって単位空間を設計し,未知のデータに対して単位空間からのマハラノビスの距離を計算し,評価を行った.本手法により,異物の有無および位置の検出が可能であることを検証した.さらに,本手法のインフラ分野へ応用を検討すべく,コンクリート構造の損傷検知について検討を行った結果,フーリエスペクトル変化の抽出に基づく損傷検知の有効性を示した. 以上の結果から,本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではRT法を用いた異物検知を行い,異物の有無を判別することが可能であることを示したが,異物位置の特定を考えた場合,複数の周波数ピークに着目し,異物位置とそれによる変動の程度についてあらかじめデータを得る必要がある.しかしインフラ構造物のような大型の構造に対してヘルスモニタリングを行い構造物の安全性を確保することを考える上で,参照するデータをあらかじめ得ておくことは相応のコストがかかることが予想される.このような課題の解決策として,本実験アプローチとシミュレーションを組み合わせる方法が考えられる.異物位置が異なるなど,様々な損傷に対する特性(時刻歴応答,フーリエスペクトルなど)がシミュレーションによって仮想的に得られるのであれば,参照データの取得に関するコストは大幅に低減できる可能性がある.この場合,対象構造物の複雑化に対し,シミュレーションの解析精度を保証するモデルを構築することが鍵となる. 本手法のインフラ構造への適用に際し,移動時における損傷検知では,レーザー加振による振動計測のS/N比が劣化し,損傷検知に悪影響を及ぼすことが判明したため,今後,計測におけるS/N比を改善する方法を検討する.移動時のノイズを軽減する方法として,台車上の加振/計測装置を防振支持することが考えられる.さらに,高度な除振を実現するためには,除振装置へのアクティブ制御技術の導入が候補になる.有意なシステム構成を含め,次年度に検討を進める.
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Remarks |
北海道大学 大学院工学研究院 知的構造システム研究室において実施された研究内容および得られた研究成について紹介している.
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