2016 Fiscal Year Annual Research Report
レーザーパルス加振と偏光高速度カメラによる透明高分子材料の非接触非破壊損傷検知
Project/Area Number |
16H04291
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
細矢 直基 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40344957)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 真吾 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40424808)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | レーザー誘起プラズマ / 複屈折 / 衝撃波 / 弾性波 / 透明体材料 / レーザーアブレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶ディスプレイに使用される位相差フィルムなど,固液界面で使用される,複屈折性を有する光学用の透明な高分子材料(透明体材料)の損傷検知は,カメラなどにより製造工程において検知する手法が実用化されている.しかし,これらの手法では,50マイクロメートル以下の損傷は検知できないため,要求精度が数マイクロメートル程度である,次世代の情報端末ディスプレイ用フィルムの損傷検知には対応できない.本研究では,レーザー誘起プラズマによるレーザーパルス加振により,透明体材料に非接触非破壊で弾性波(応力波)を生成し,この弾性波が損傷付近を伝播する際に発生する応力集中を偏光高速度カメラによる複屈折計測に基づき可視化することで,固液界面における透明体材料の数マイクロメートル程度の損傷を非接触非破壊で検知することを目指す. 平成28年度は,レーザー誘起プラズマによるインパルス加振力を用いて,透明体材料に弾性波を生成した.まず,はじめに,レーザーアブレーションを用いた非接触インパルス加振により透明体材料内部に弾性波を生成し,これをシュリーレン法により可視化することで,透明体材料の機械的性質を同定した.次に,レーザーブレイクダウンにより生成された衝撃波を用いた,非接触インパルス加振力の動特性を調べた.この加振力は,ほぼ理想的なインパルスであり,高い再現性,50 kHz程度の高周波数帯域までほぼ一様な加振成分を有することがわかった.また,レーザーブレイクダウンの生成位置と対象構造物との距離が近ければ,加振領域は小さく理想的な点加振と仮定できることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,レーザー誘起プラズマによるインパルス加振力により,透明体材料に非接触非破壊で弾性波(応力波)を生成し,この弾性波が損傷付近を伝播する際に発生する応力集中を偏光高速度カメラによる複屈折計測に基づき可視化することで,透明体材料の損傷検知を非接触非破壊で実現することを目指す.平成28年度は,レーザー誘起プラズマによるインパルス加振力により,透明体材料に非接触非破壊で弾性波を生成した. (1) レーザーアブレーション加振を用いた透明体材料の機械的性質の同定 レーザーアブレーションにより透明体材料(ゲル)に対して非接触にインパルス加振力を作用させ,これに弾性波を生成した.そして,ゲルに伝播する弾性波をシュリーレン法により可視化し,高速度カメラで撮影し,ゲルの密度と弾性波の伝播速度との関係を調べ,得られた弾性波の伝播速度よりゲルのヤング率,およびポアソン比を求めることができた. (2) レーザーブレイクダウンにより生成された衝撃波の動特性の調査 レーザーブレイクダウンにより生成された衝撃波を透明体材料に対する加振力として用いる場合について,(i)加振力の動特性(大きさ,周波数特性など),(ii)加振力として作用する領域(面積)を検討した.この加振力は,ほぼ理想的なインパルスであり,高い再現性,50 kHz程度の高周波数帯域までほぼ一様な加振成分を有することがわかった.また,この加振力を対象構造物に対する入力として,周波数応答関数を計測した.本手法(レーザーブレイクダウンの生成位置と対象構造物との距離が6 mm)および有限要素解析より得られた対象構造物の周波数応答関数を比較したところ,両者の振幅および位相は良く一致した.これより,レーザーブレイクダウンの生成位置と対象構造物との距離が近ければ,加振領域は小さく理想的な点加振と仮定できることがわかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
透明体材料の非接触非破壊損傷検知の検討 平成29年度は,透明体材料としてアクリルやゲルなどを対象とする.透明体材料に設ける損傷は,クラック,ピンホール,スクラッチ,デントなどとする.この他,機械的性質の違いや欠陥についても検出可能か調べる.また,損傷の大きさは十数マイクロメートル~数百マイクロメートル程度の範囲とし,加振点と損傷位置との関係は数ミリメートル~数百ミリメートル程度の範囲で調べる. 本研究では,入力方法として,レーザー誘起プラズマによる衝撃波およびレーザーアブレーションを検討する.まず,はじめに,レーザー誘起プラズマ衝撃波加振に変更(非破壊化)しても,昨年度と同様に弾性波を生成でき,これを可視化できるかどうか検証する.これらの非接触方式での入力が困難となる場合には,従来の接触式加振方法による検討も視野に入れる.弾性波の損傷通過前後の周波数成分,伝播速度,減衰,損傷から反射を観察することで,損傷検知を検討する.また,境界からの反射の影響を除去するための適切なデジタルフィルタの実現可能性を検討する.
|
Research Products
(8 results)