2017 Fiscal Year Annual Research Report
安全・安心な電気・電子機器の低ノイズ設計実現に不可欠な等価回路モデルの開発
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16H04318
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
豊田 啓孝 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20311798)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 等価回路モデル / 低ノイズ設計 / 平衡度整合 / 伝送線路 / ノイズ源モデル / モード変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
「平衡度整合」の概念の有効性を示し,安全・安心な電気・電子機器の低ノイズ設計の実現を目指して,5つの「平衡度不整合」問題,すなわち,(1)回路基板上の差動線路での『屈曲』,『ビアによる他層への移行』という平衡度不整合構造の等価回路モデル作成,(2)等価回路モデルに基づいた電源系に使用する低モード変換コネクタの提案,(3)微細化が進み表面粗さなどが原因で均一性が担保されない回路基板上の差動配線における等価回路を用いたモード変換評価,(4)束ねられたケーブルで生じるクロストーク(モード変換)問題に対する等価回路モデルを用いた検討,(5)インバータ回路におけるノイズ源モデルの構築,に対してそれぞれ検討を行った。 (1)では,差動スキュー低減という観点から屈曲構造を考察し,ガラスクロスメッシュと差動線路のなす角度を40°程度に,屈曲を90°に設定するのがよいという結果を得た。(2)の電源系不連続部におけるモード変換抑制では,キャパシタ実装におけるESLキャンセル構造の最適化を検討した。その際等価回路シミュレーションによる見積もりに比べ実測で得られた効果が小さく予測誤差の大きいことが問題となった。(3)では,まず周期構造を導入した差動線路について3次元電磁界シミュレーションに加え実基板の試作・評価によりその有効性を確認した。また、ガラスクロスのメッシュで生じる差動スキューを効率よく見積もる際に有効な簡易モデルを提案した。(4)では事前準備として,束ねたケーブルで生じるクロストーク(モード変換)問題を扱うため,束ねたケーブルのモード変換を測定により評価した。最後に,(5)のノイズ源モデルの構築では,IHヒータを対象としたノイズ等価回路モデル構築においてシミュレーション精度向上のための等価回路のトポロジーを再検討し、精度がトポロジーに依存することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)では,屈曲部のモード等価回路構築を28年度に引き続き行った。並行して(3)に関連して屈曲部の角度についても検討した。差動線路とガラスクロスメッシュのなす角度が差動スキューの大きさに影響を与えることが分かったため,この結果に基づいて低差動スキューを実現するためガラスクロスメッシュと差動線路のなす角度を40°程度にした上で,90°屈曲とすることを提案し、3次元電磁界シミュレーションで妥当性を示した。(2)では,キャパシタによるモード変換低減の効果をESLキャンセル構造により最大化する検討を行ったが,実測と等価回路シミュレーションとの差異が大きいことが問題となった。問題の原因は今のところ明らかになっていない。(3)では,まず周期構造を導入した差動線路について3次元電磁界シミュレーションで得られていた特性を実基板の試作・評価により確認し,今後の高密度実装に有効であることを示した。次に,基板を40°程度回転させることでガラスクロスのメッシュに起因する周期的な揺らぎの影響を低減できることを示した。この時、差動スキューを効率よく見積もるため簡易モデルを提案した。この簡易モデルは、フレキシブルケーブルで使用されるメッシュグラウンドで生じる差動スキュー評価にも利用可能であることを示した。(4)では,任意に束ねたケーブルで生じるクロストーク(モード変換)をミックストモードSパラメータで実験的に評価し,基礎データの収集を行った。最後に(5)では,IHヒータに含まれるインバータを対象としたノイズ等価回路モデル構築において、等価回路のトポロジーが精度に大いに関係することを示した。これは、回路基板における電源パターン形状の影響を示唆するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)では,これまでに提案している極めて低モード変換の非対称テーパ付密結合屈曲構造を対象に屈曲部の等価回路モデルの完成を目指す。さらに,回路基板上の差動線路での『ビアによる他層への移行』という平衡度不整合構造を対象に,モード等価回路の観点から低モード変換となるビアの最適位置を調べる。(2)では,ESLキャンセル構造による低ESL化によるモード変換抑制において等価回路シミュレーションによる見積もりに比べ実測で得られた効果がかなり小さくなった。シミュレーションと実測の差異が小さくなるよう等価回路モデルを見直し精度向上を試みる。(3)では,周期構造を導入した差動線路について特性最適化のための構造パラメータの検討を行う。また,回路基板に使用されるガラスクロスの周期構造やフレキシブルケーブルで使用されるメッシュグラウンドの周期構造では,現象の解明と差動スキュー低減のための新たな構造の提案を目指す。(4)では束ねられたケーブルで生じるクロストーク(モード変換)問題を扱うため,断面内でケーブル配置がランダムに変わることで生じるモード変換を統計的に取り扱う手法を引き続き検討する。最後に(5)では,トポロジー再検討によるインバータ回路におけるノイズ等価回路モデルの精度向上の成果を,DC/DCコンバータ回路を対象としたノイズ源等価回路モデルの構築に適用することを試みる。 上記の研究には,大学院生4名が専従で検討を行い,学部4年生が補佐をする体制となる。評価では一昨年度購入したベクトルネットワークアナライザを大いに活用する。
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Research Products
(5 results)