2017 Fiscal Year Annual Research Report
バンドエンジニアリングで実現する世界最高効率Inフリー化合物薄膜太陽電池の開発
Project/Area Number |
16H04336
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
荒木 秀明 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (40342480)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薄膜太陽電池 / 硫化物 / バンドギャップ制御 / 薄膜 / カルコゲン化合物 / 銅錫ゲルマニウム硫化物 / インジウムフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,従来のカルコパイライト系化合物太陽電池材料のCu(In,Ga)(S,Se)2に代わる光吸収層材料として,希少元素Inや毒性元素Seを含まない4元系材料Cu2(Sn,Ge)S3に着目した。Cu2(Sn,Ge)S3 薄膜の作製技術の確立と物性解明による材料開発とともに,Ge 組成制御によるバンドエンジニアリングを用いて最適なデバイス構造を検討し,Inフリー化合物を用いた高効率薄膜太陽電池光の実現を目指して,以下の課題に取り組んだ。 1.蒸着装置にGe蒸発源として新規にKセルを追加し,Cu,Sn,Ge,Sの同時蒸着を可能とする装置改良を行い,Ge/(Ge+Sn)組成比をGeセル温度,Snセル温度によって制御し,緻密なCu2(Sn,Ge)S3薄膜の作製ができる環境を構築した。また,作製したCu2(Sn,Ge)S3系薄膜のうち,特にベースとなるCu2SnS3薄膜において,同時蒸着製膜後の熱処理時にNaを薄膜に添加することによって,Cu2SnS3薄膜の結晶成長が促進され,結晶粒径が大幅に増大することを明らかにした。 2.Cu2(Sn,Ge)S3薄膜太陽電池の太陽電池特性に対するGe組成依存性の解明に向け,異なるGe組成を持つ試料を用いて太陽電池素子を作製し,光起電力特性を評価した。作製したCu2(Sn,Ge)S3系薄膜のうち,特にベースとなるCu2SnS3薄膜において,太陽電池特性に大きく影響をする因子として,ガラス基板からのNa拡散や外部からのNa添加のによる光電変換特性の向上を明らかにし,Cu2(Sn,Ge)S3薄膜太陽電池の高効率化のための新たな指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,Cu2(Sn,Ge)S3薄膜太陽電池の太陽電池特性に対するGe組成依存性の解明に向け,異なるGe/(Ge+Sn)組成比を持つ試料を作製し,光起電力特性を報告してきた。蒸着装置にGe蒸発源として新規にKセルを追加し,Cu,Sn,Ge,Sの同時蒸着を可能とする装置改良を行い,Ge/(Ge+Sn)組成比をGeセル温度,Snセル温度によって制御し,緻密なCu2(Sn,Ge)S3薄膜の作製ができる環境を構築した。また,作製したCu2(Sn,Ge)S3系薄膜のうち,特にベースとなるCu2SnS3薄膜において,同時蒸着製膜後の熱処理時にNaを薄膜に添加することによって,Cu2SnS3薄膜の結晶成長が促進され,結晶粒径が大幅に増大するとともに光電変換特性が向上することを明らかにし,Cu2(Sn,Ge)S3薄膜太陽電池の高効率化のための新たな指針を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
Cu2(Sn,Ge)S3 薄膜の作製技術の確立と物性解明による材料開発とともに,Ge 組成制御によるバンドエンジニアリングを用いた高効率薄膜太陽電池の実現を目指して,Cu,Sn,Ge,Sの同時蒸着による様々なGe組成を持ったCu2(Sn,Ge)S3薄膜の製膜条件の最適化を行う。また,アルカリ金属元素Naの添加による薄膜の結晶成長促進などの高品質化について引き続き検討する。また,バンドギャップグレーディングのためのGe傾斜組成を有する薄膜の作製方法の確立を目指し,Cu,Sn,Ge,Sの同時蒸着中におけるGe,Sn製膜レートの制御による前駆体薄膜(プリカーサ)の組成傾斜形成の試みなど, Ge/(Ge+Sn)組成比プロファイルを制御する方法を検討する。これによって得られるCu2(Sn,Ge)S3薄膜を用いてCdSバッファ層とのヘテロ接合太陽電池を作製し,光起電力特性の依存性を調べ,バンドエンジニアリングによる高効率化について検討する。
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