2017 Fiscal Year Annual Research Report
磁壁移動型ストレージデバイスの安定動作に関する研究
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16H04352
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 輝光 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20423387)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁壁移動ストレージデバイス / マイクロマグネティックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はCo/NiおよびCo/Pd人工格子薄膜における磁壁抗磁力に与える下地金属膜の効果調査、電流を流すことによって発生する熱を利用した局所的な磁壁の導入を目的とした実験を主として行った。下地層としてAuおよびPtを用い、Co/NiおよびCo/Pd薄膜の核形成磁界および磁壁抗磁力を極Kerr効果測定器を用いて測定した。Co/Ni薄膜ではAuの粒径が大きい場合に垂直異方性が増し、磁壁抗磁力が小さくなることが分かった。また、Co/Pd薄膜では下地がPtの場合に核形成磁界がAuの場合のおよそ2倍の3 kOeとなり、また磁壁抗磁力と核形成磁界の比が0.6程度の比較的良好な特性が得られたが、ピニングサイトが多くなると考えられる磁気特性が得られる傾向があることが分かった。Co/Ni磁性細線では磁壁抗磁力と核形成磁界の比を0.8程度に低減させることで0.9のものと比較すると磁壁移動に必要な電流値を20 %程度低減できることを示した。さらに磁性膜のECC構造化による磁壁導入とは異なる熱による磁壁の導入を試みた結果、磁壁の導入確率がおよそArrhenius則に従う結果が得られ、熱による磁壁導入も可能であることを示した。また、本研究ではKerr効果による測定を前提としているため、良好な感度を得るために比較的幅の広い細線(10 ミクロン程度)のサンプルを用いていたが、このような幅の広いサンプルでは磁壁移動に必要な電流値に大きな分散が見られ、その分散を小さくするには細線幅を5ミクロン以下にする必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はサンプル作製に必要な電子線蒸着装置の故障により前半の間は実験ができなくなるというアクシデントに見舞われたが、後半には装置も稼動し、何とか実験環境を回復することができた。磁性薄膜の核形成磁界と磁壁抗磁力との比が小さな薄膜を用いることで磁壁移動に必要な電流値が大幅に低減できることを実験的に明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Kerr効果測定器の低ノイズ化を早急に行い、磁壁移動の速度の測定を行う。また、組成を調整したTbFeCo薄膜における磁壁移動検出を行う。
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