2017 Fiscal Year Annual Research Report
磁壁移動を利用した低周波駆動薄膜磁界センサの実現と電磁非破壊評価の高度化への貢献
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16H04371
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
菊池 弘昭 岩手大学, 理工学部, 准教授 (30344617)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁界センサ / 磁壁移動 / 電磁非破壊評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
低周波における磁壁移動運動に基づく、アモルファス磁性薄膜矩形状微細素子の外部磁界印加時のインピーダンス変化について基礎的な検討を継続した。以下、得られた知見を示す。 1. 素子に入力する高周波電力がインピーダンス変化の振る舞いに大きく影響を及ぼすことを実験的に明らかにした。電力が低い場合、磁壁共鳴は起こらず、また、電力が大きすぎても素子変化特性を劣化させ、入力値に最適値が存在することを明らかにした。理論的な解明の継続も重要であるが、高感度を得るための指針を実験的に示す重要な結果である。2.これまで、磁壁共鳴が観測されなかった幅の広い素子でも入力電力の最適化を図ることで、幅の狭い素子と類似の挙動を示すことを明らかにした。駆動・検出回路との整合性を図る場合において、素子設計の自由度を高める結果である。3. 1.2.の成果の一連の検討を通して、実験的に高感度を得られる条件が得られた。変化割合として30MHzで50オーム/Oeが得られた。回路構成にも依存するが、ナノテスラオーダーの磁場検出の見通しを得た。4. 低周波駆動を目指したセンサ素子の設計作製を実施した。 一方で、以下の項目が次年度実施すべき課題とした見出された、あるいは、残された。1. 磁壁の挙動は複雑である一方、利用している磁壁移動モデルは簡略化されたものであり、より正確に現象を説明可能なモデルが必要である。加えて、モデルパラメータと使用する材料特性との相関についての検討も設計上重要である。2. 磁壁共鳴挙動の実験的確証にはまだ至っておらず、検討の継続が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁界中熱処理装置の納品が請負業者の都合で、年度末となり素子作製上、若干の支障をきたすも、関係研究機関の設備利用等により、研究遂行の遅れとはなっていないと判断する。実験的にではあるが、駆動条件の最適化を図り、その知見に基づいて、プロトタイプ用の素子設計と作製と当初の計画が実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までに得られた磁界センサ素子の小型化と高感度化を図る。一部, 動作原理解明, 動的磁区観察技術については検討を継続する。特に, MHz帯域での磁壁共鳴の実験的確認には至っていないため, その実現のために観察・評価手法の検討も含め研究を遂行する。一方, 実験的に駆動条件や素子構成, 素子形状の最適化をより進め, 得られた最適化条件に基づき, MHz帯域で動作するセンサ(駆動・検出回路込)を30年度前半に作製し, 電磁非破壊評価システムに組込み, 動作検証を行う。電磁非破壊評価においては高い空間分解能を有しながら, 検査範囲は広範囲を要求されるので, 磁界センサのアレイ化が必要である。同時進行としてセンサ素子のアレイ化を図り, 高空間分解能化に対応するためグラジオメータ動作の検証も行う。30年度の後期の始めの段階でそれぞれのプロトタイプ素子を作製して電磁非破壊評価応用システムに組み込む。電磁非破壊評価応用システムとしては, 別プロジェクトにて開発を推進している走査型システムの一部に本研究で作製した素子を組み込む形で利用し効率よく研究を推進する。鋼材等内部の微小欠陥の検知を適用事例として試みる。本研究で利用している原理の磁界センサを使用した場合、鋼材表面の100マイクロメータ弱のきずの検知は可能となっているが, 鋼材内部でかつ数10マイクロメータ以下の欠陥評価の要望が強いためである。また, 関連して29年度及び30年度前半の研究成果を学術会議で発表を行い, 論文投稿も実施する。最後に, 本研究の総括を行い, 低周波駆動可能な磁界センサの開発とその高機能化としてアレイ化の実現, 電磁非破壊評価応用の高度化として鋼材の微小欠陥の検知への適用性について評価をまとめる。
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