2017 Fiscal Year Annual Research Report
材料・構造物内部の水分量分布の定量的非破壊計測に関する研究
Project/Area Number |
16H04395
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
廣瀬 壮一 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (00156712)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 陽 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (60724614)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 超音波ガイド波 / 層構造弾性体 / 分散特性 / 非破壊評価 / 電磁波レーダ / 比誘電率 / カルマンフィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,超音波を用いた計測手法の本実験を実施するとともに,電磁波レーダを用いた予備実験を実施した. 超音波を用いた計測手法に関しては,鋼板を接着補強したコンクリートの一部が滞水した試験体を対象に,鋼板接着の健全部と剥離・空隙部(滞水無,部分滞水,満水)の4つの状態を想定し,各々の状態に対応する層構造モデルを設定してガイド波の分散曲線を導出した.その結果,4つの状態に相当する層構造の違いによって伝搬する超音波ガイド波の位相速度の分散特性が大きく異なることがわかった.また,部分滞水のモデルでは滞水層厚によっても分散特性が大きく変化し,ある固定された位相速度に対してガイド波の励起周波数と部分滞水時の滞水層厚が一対一で対応することが明らかとなり,ガイド波の励起周波数から滞水層厚を推定できることがわかった.このような理論的裏付けの下で,一対の斜角探触子によるガイド波の送受信の実験を実施した.両斜角探触子の角度を調整して位相速度を固定し,その状態で探触子に付与する周波数を掃引した.このとき,ガイド波が最も発生する周波数を求め,理論分散曲線から得られた周波数と比較した結果,よい一致を得ることができた.これによって,ガイド波の送受信という簡単な計測手法で鋼板を接着補強したコンクリートにおける滞水状態を推定できることがわかった. 一方,電磁波を用いた水分量計測では,電磁波の反射・散乱と比誘電率の関係を利用する.材料・構造物内部の水分量が深さ方向に変化するとして,比誘電率が変化する多層モデルを考え,電磁波の反射係数を解析的に求めた.一方,電磁波レーダによる予備実験を行い,得られた反射係数が解析結果に一致するようにカルマンフィルタを用いて比誘電率を求めた.その結果,おおよその水分量の推定が可能であるものの,その精度が十分でなく,今後の改善が必要であることがわかった
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,超音波および電磁波を用いた材料・構造物内部の水分量分布を計測する手法を開発することを目的としているが,平成29年度は,超音波法については本実験を実施し,電磁波法については予備実験を実施した. 超音波法については,鋼板を接着補強したコンクリートの一部が滞水した試験体を対象に,理論解析結果を基礎とした本実験を実施し,滞水層厚を含めた滞水状態を推定できる超音波ガイド波法を開発した.一方,電磁波レーダを用いた水分量推定の予備実験では,推定精度は十分ではないものの,おおよその水分量を推定できることがわかった.したがって,本研究は概ね順調に進んでいる.
|
Strategy for Future Research Activity |
超音波法については,鋼板を接着補強したコンクリートの一部が滞水した明瞭な層構造の試験体に対して,滞水層厚を含めた滞水状態の推定手法を開発することができた.しかし,水分が連続的に分布するような材料・構造物に対する有効な計測手法はまだ確立されていない.一方,電磁波法については,電磁波レーダによる予備実験の結果,おおよその水分量分布の推定が可能であるものの,推定精度が十分でなく,今後計測手法およびデータ解析の改善が必要であることがわかった. 以上のように,超音波法および電磁波法のいずれにおいても残された課題がある.それらについては次年度以降に解決する予定である.
|