2018 Fiscal Year Annual Research Report
浸透条件下の盛土構造物の崩壊機構の解明と合理的な設計・照査法の提案
Project/Area Number |
16H04412
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
小高 猛司 名城大学, 理工学部, 教授 (00252271)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 三軸試験 / 浸透 / 吸水軟化 / 砂質土 / 中間土 / 礫質土 / 盛土 / 河川堤防 |
Outline of Annual Research Achievements |
浸透条件下の盛土構造物の合理的な設計・照査法の提案を目的としている。現在までに得た研究成果の概要は以下の通りである。 ①吸水軟化試験法の提案:盛土構造物の斜面においては,浸透条件下では間隙水圧上昇に伴い有効応力が低下し,せん断抵抗力が減少して破壊に至るため,このメカニズムを三軸試験で再現する吸水軟化試験法を提案した。すなわち,排水条件で初期せん断を与えた後,軸差応力一定条件下で,間隙水圧のみを上昇させて限界に至らしめる。この吸水軟化試験を複数の現地盛土で採取した試験試料にて実施し,その適用性を検討した。その結果,通常の一軸試験や三軸試験では高いせん断強さを有する盛土材料でも,吸水軟化試験によって,浸透時にはせん断抵抗力が大きく低下することが示された。一方,通常の三軸試験では小さなせん断抵抗と評価される礫質盛土においては,吸水軟化試験によって低有効応力条件下では,比較的大きなせん断抵抗を発揮し,浸透時のすべり破壊の耐性が高いことも示された。 ②細粒分の流失に伴う盛土材料の力学特性の評価:浸透条件下で実施可能なせん断試験装置を開発し,せん断中に細粒分が流失する様子を観察し,せん断と粒度変化との因果関係を解明した。すなわち,静置条件下では高い浸透圧を作用させても細粒分は流失しないのに対し,わずかにせん断変形が加わることによって細粒分の流失が進行する。一方,細粒分の流失によって,砂質土の力学特性は大きく変化する一方で,その変化は間隙比や相対密度に強く依存するために,細粒分の流失が盛土崩壊の直接の誘因かどうかは不明確である。 ③浸透条件下のすべり破壊予測解析法の提案:飽和-不飽和浸透流解析と剛塑性有限要素解析を連成した,浸透条件下での斜面崩壊の安全率を精度良く求めるFEM解析法を開発し,模型実験においてその適用性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浸透条件下における盛土の照査・設計法の構築にあたり,最も重要な浸透条件下での盛土材料のすべり破壊に対するせん断抵抗力を適正に評価するための力学試験法の提案がほぼ確立した。すなわち,この吸水軟化試験の提案によって,既存の通常の試験法では評価が困難であった盛土地盤材料の低有効応力条件下での強度評価ができるようになり,実際の盛土崩壊事例についての合理的説明も可能となった。浸透条件下でのせん断に伴う細粒分流失機構とせん断特性の把握については,開発したせん断試験装置を用いて,ミクロレベルでの解明が進展しているが,引き続き試験条件を増やして継続する。また,浸透条件下での斜面崩壊を予測するFEM解析法も模型実験の検証が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね順調に研究が進行している。提案した吸水軟化試験について,実際に崩壊した事例の盛土材料を用いた室内試験を今年度も実施するとともに,合理的な照査・設計法の構築に繋げる。浸透条件下でのせん断試験に関しては,前年度に試験装置を改良したことにより,試験条件を増やして,せん断特性と細粒分流失との関係性を材料の強度特性評価に繋げられるように実験を進める。また,合理的な設計法・照査法の構築に向けて,開発した浸透場連成の剛塑性FEM解析法を実際の崩壊事例に適用して,高度化ならびに実用化をはかる。
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