2017 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation of primary productivity in coastal waters based on biogeochemical behavior of iron
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16H04435
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任准教授 (30598503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 千洋 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (10402091)
伊藤 紘晃 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 助教 (80637182)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄 / 微量金属 / 沿岸域 / 植物プランクトン / 陸域 / 森と海のつながり |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄は植物プランクトンを含むほぼすべての生物の生長に必須な微量金属である。特に、沿岸域や海洋において鉄分が不足する場合があり、陸域から河川や粉塵等を通して供給される溶存鉄が一次生産の維持に重要であることが認識されている。研究2年目となる平成29年度における研究では、河川や下水処理水など、陸域から供給される微量金属(鉄ならびに銅)のスペーシエーション(化学種)に関する研究を実施した。下水処理水など流域での人為的負荷を受ける河川(都市河川)ならびに人間活動の影響が小さい支流河川(自然河川)を対象として、微量金属スペーシエーションを解析した。その結果、都市河川においては溶存態有機物濃度が比較的高く、そのため、溶解性無機金属の割合が小さくなることが示唆された。沿岸域において植物プランクトンが利用可能な金属の形態は、溶存態全金属濃度ではなく溶解性無機金属濃度に依存する。従って、都市河川において溶解性無機金属の割合が小さくなることは、植物プランクトンの金属利用性が低下することを示す。しかしながら、溶存金属負荷量という観点からは、都市河川は比較的高く、以上のことは、河川下流域や沿岸域における金属の生物利用性を評価するためには、金属の負荷量に加えて化学種も考慮する必要があることを示している。また、還元体の二価鉄が植物プラントンの鉄摂取に重要な形態であり、自然水中において鉄の酸化還元反応はスーパーオキシドや過酸化水素などの活性酸素に影響をうける。本研究では、腐植物質を含む溶存有機物質の光化学反応により生じる活性酸素種を反応速度論的に調べ、芳香族性の高い溶存有機物ほど活性酸素種を生成することが明らかとなった。以上の結果は、沿岸域を含めた水域での鉄の地球化学的動態や生物利用性を明らかにするためには、溶存有機物の質が鉄の酸化還元に及ぼす影響も着目した上で、総括的に評価する必要があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目となる平成29年度の研究では、水域における鉄のスペーシエーション解析や鉄の酸化還元に重要な活性酸素種の動態解析を実施しており、概ね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる平成30年度の研究では、陸域の土地利用が流域における鉄の環境動態ならびに沿岸域における生物利用性、植物プランクトンの増殖に及ぼす影響を調べ、植物プランクトンによる鉄摂取の影響も考慮した上で、総括的な沿岸域鉄動態モデルを開発する予定である。
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