2016 Fiscal Year Annual Research Report
近世指図の作図技法・描法の展開に関する研究Ⅴ‐建地割編年指標の再検討‐
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16H04485
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊東 龍一 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (80193530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 久太郎 宮城学院女子大学, 学芸学部, 名誉教授 (50086104)
斎藤 英俊 京都女子大学, 家政学部, 教授 (30271589)
吉田 純一 福井工業大学, 工学部, 教授 (40108212)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 指図 / 建築図面 / 建地割 / 作図技法 / 描法 / 江戸時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
建地割という建築図面を分析するに当たり、建地割や矩計以外の高さ寸法を示す図が存在するという事実を検討する必要に気づいた。図は水平方向の基準線を設定し、図面上に描いた上で、桁や棟木の高さ寸法を基準線からの距離を記すことで示したもので、複数の建物から成る一連の建物群の設計などに用いられる。江戸城の本丸・西丸御殿のほか京都御所の造営においても作成されていた。建地割のような基本図以外に実際の建物の造営に使用された図をも視野に入れて考察することが、建地割の果たす役割を正確に把握するために重要と考えたためである。今後も検討が必要である。 上記の考察とは別に進めていた建地割の作図技法・描法の分析としては、東京国立博物館の旧甲良家所蔵の建地割では、切妻屋根の棟の位置で用紙を二つ折りにして片側で作図して屋根面の曲線を描き、反対側の屋根面のヘラ線を写して作図するなどの作図技法が認められた。また、すでに調査済であった福井県の国指定重要文化財大滝神社の建地割の分析では、現在の図を描くため以外の作図痕があり、現在の社殿が建地割に描かれる姿と異なることと併せて改めて建設の経緯を含めて検討を続ける必要があること等が判明した。 また、近世における江戸幕府作事方、そのうちの江戸方の作った図の作図技法・描法については、図の残存状況から江戸後期のものについての情報が集まりつつあるが、作図技法・描法の変遷を知るためには江戸中期以前の技法についての知見が必要である。その点で大田区立郷土博物館所蔵の木原家文書の図は、これまでの研究の欠を補う史料である可能性がある。一方、江戸幕府作事方の上方についても、これまでの中井家の建地割の分析だけでは調査数としては不十分で、そのためには叡山文庫所蔵図の調査・分析が必要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの個々の調査結果を分析する点においては進んでいるといえる。それらを統合したところから得られる最終目標である建地割の編年指標を見出すという点においては十分検討を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
編年指標を見出すという大目標の達成には、長い近世における各時代の図の分析が必要である。その点で江戸幕府作事方の、それも江戸方における分析は、大田区立郷土博物館所蔵木原家文書の図の分析で進められると考える。一方、上方については叡山文庫所蔵図の調査・分析が有効と考える。この両方の図の分析で江戸幕府作事方が作成した図の編年指標が見いだせ、目標に近づけるものと考えている。
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