2017 Fiscal Year Annual Research Report
Search for Semiconducting Quasicrystal and High-performance Thermoelectric/Thermal-rectification Materials
Project/Area Number |
16H04489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 薫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30169924)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近似結晶 / 準結晶 / 元素置換 / 高圧合成 / 熱電物性 / 液体急冷 / 準安定相 / 単相 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)Al系正20面体準結晶の探索:第一原理計算により半導体となることが予想されていたAl-Ir1/0近似結晶が、実験的にはAlが欠損し、価電子帯にフェルミ準位が位置する金属になっていることを明らかにした。Aiの欠損を抑制して半導体を実現するために、a)Cu原子を侵入させること、b)高圧合成を行うこと、c)IrをRhで置換することを試みた。a)では、Cuが侵入型で固溶する領域ではホール濃度が減少して半導体に近づいたが、Cu濃度が大きくなるとAlと置換して逆にホール濃度が増大してしまった。b)では、4GPa、1000℃で合成することにより、Al欠損を減少させることに成功したが、半導体までには至らなかった。c)では、IrをRhで完全に置換するとAl欠損は完全に無くなるが、エネルギーギャップも閉じてしまった。部分置換では、Al欠損の減少とエネルギーギャップの減少の競合により、25%置換で熱電性能は向上したが、やはり半導体には至らなかった。 2)B系正20面体準結晶の探索:静電浮遊液体急冷装置を使って、純Bの融点から約60Kの過冷却液体からの急冷凝固試料中のX線回折の未知ピークが、準安定相であるα正方晶ボロンと高圧相であるγ斜方晶ボロンであることを明らかにした。 3)金属間化合物における熱電材料の創製:ダイヤモンドアンビル装置を使った高圧合成により、実験的な報告の無かったFeAl2の半導体相を作製することに成功していたが、試料が小さ過ぎて熱電物性を測定することができなかったので、マルチアンビル装置を使って、より大きな試料の作製を試みた。ところが、高圧化でも高温にすると、2つの隣接相に分解してしまうことが分かり、目的相の単相試料が得られる条件を探索し、最終的には熱電物性が測定できる程度の大きい、単相試料の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度末の時点では、半導体準結晶の前駆物質(Al-Ir1/0近似結晶とFeAl2半導体結晶)の前者ではAl欠損により半導体化が阻害され、後者では複雑な状態図によって熱電物性を測定できる大きさの単相試料が作製できていなかった。しかし、繰越申請をすることによって、平成30年度になって、前者では3種類の方法(Cuを侵入させる、高圧合成、IrのRh置換)でAlの欠損を減らすことに成功し、半導体化に近づいた。後者では、状態図を明らかにすることで、大きな単相試料を作製できる条件を明らかにでき、目的の試料の作製に成功した。B系では、前年度までに未知だったX線回折ピークの同定に成功し、準安定相や高圧相が過冷却液体急冷によって生成することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Al系正20面体準結晶の探索:Al-Ir1/0近似結晶の半金属的バンド構造における伝導帯下端と価電子帯上端の電子状態の起源を明らかにして、エネルギーギャップを増大させる方法を探る。 2)第一原理計算により、α菱面体晶ボロンとβ菱面体晶ボロンを、正20面体準結晶や近似結晶の2種類の構造単位であるプロレイトとしたときの、オブレイトや近似結晶や準結晶の生成エネルギーを見積もり、実現性を探る。 3)金属間化合物における熱電材料の創製:作製に成功したFeAl2半導体相の大きな単相試料の熱電物性を測定する。高圧でも、高温になると、FeAl2半導体相が隣接する2つの相に分解する理由を、第一原理計算で明らかにする。
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