2016 Fiscal Year Annual Research Report
超大規模分子動力学法解析に立脚した合金組織形成過程の俯瞰的理解と高精度制御
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16H04490
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁田 靖 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90401124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 宗一 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30431331)
高木 知弘 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (50294260)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金属物性 / 大規模分子動力学 / 凝固 / 粒成長 / 核生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では合金組織のさらなる高精度制御に向けて,核生成・凝固,粒成長過程の複合的ダイナミクスを系統的に解析し,合金組織形成過程の支配因子を原子スケールの動力学解析により解明することを目的としている.
平成28年度はマルチGPU大規模計算コードの開発を行い,これを用いて約10億原子系からなる純鉄過冷却融液からの核生成・凝固過程の大規模分子動力学シミュレーションを実行し,均質核生成中においても先行核周りの液相に局所的な秩序(20面体)が生じ,衛星核を誘発することや,特定の面方位を有する先行核表面から粒界エネルギーの少ない粒界を有する別の核が発生するなどを見出した.これらの知見をNature Communications(8(2017)10)で公表するとともに,研究成果を広く周知すべくプレスリリースを行った.
さらに比較的小さな計算系(1000万原子程度)で長時間の粒成長計算を行い,二次元および三次元粒成長則を直接導出した.具体的にはadaptive CNA法とクラスター解析を組み合わせることで原子座標情報から直接粒成長情報を抽出し,それぞれの粒の成長・消滅過程を時間発展的に追跡し,経験則と比較検討した.計算結果より,2次元系においては,von Neumann-Mullins則におおむね一致する一方,3次元においては既存経験則とのずれに着目し,新たな経験則を導き出した.これらの知見を日本鉄鋼協会講演大会で発表するとともに,同学会英文雑誌ISIJ International(56 (2016) 2199)にて公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,初年度に純金属系のマルチGPU大規模計算コードの開発を完了し,具体的に10億原子程度の大規模系における核生成・凝固過程の解析を実行することができた.また当該計算からは均質核生成からの局所不均一性など大変有意義な知見を得て注目度の高い雑誌Nature Communicationsで公表するなど,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き大規模計算を行うが,純物質系コードを合金系に改良し,合金過冷融液からの核生成・凝固過程の解析を行う.並行して高度なポスト処理コードを開発し,粒成長過程のさらなる知見を得る予定である.
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