2017 Fiscal Year Annual Research Report
Layered perovskite engineering: design of ferroelectrics through control of oxygen octahedral rotations
Project/Area Number |
16H04496
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 晃司 京都大学, 工学研究科, 教授 (50314240)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村井 俊介 京都大学, 工学研究科, 助教 (20378805)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 強誘電体 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のペロブスカイト酸化物強誘電体では局所的な金属元素-酸素間の共有結合が結晶構造の反転対称性の破れをもたらすが、研究代表者らは、層状ペロブスカイトNaYTiO4において、構成元素の共有結合に依存しない機構、すなわち「頂点共有したTiO6酸素八面体の回転」によって結晶構造の反転中心が消失することを初めて実証した。本研究では、強誘電体の物質研究の新しいパラダイムの構築を念頭に、この原理を大きく拡張する。具体的には、「層状ペロブスカイトエンジニアリング」により酸素八面体回転を制御して、(1)ハイブリット間接型強誘電体の物質群を開拓するとともに、(2)このタイプの強誘電体に特有の物性・機能創出を目指す。 平成29年度は、ルドルスデン-ポッパー型層状ペロブスカイト酸化物に焦点を当て、強誘電体の物質探索を行った。まず、第一原理計算により強誘電体の候補物質を選定し、高温固相反応によりそれらの多結晶体を合成した。次に、得られた試料に対して、放射光X線回折、中性子回折、光第二高調波発生、および強誘電ヒステリシスの測定を行った。これら計算と実験を組み合わせた研究を通じて、Sr3Zr2O7が新規強誘電体であることを発見した。具体的には,ZrO6八面体回転が結晶構造の反転対称性を破り、強誘電性の発現をもたらすことを見出した。また、放射光X線回折、中性子回折、光第二高調波発生の温度変化から、Sr3Zr2O7の強誘電-常誘電相転移挙動を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、酸素八面体回転由来の間接型強誘電体をいくつか見出すことができた。一つの代表的な成果として、n = 2のルドルスデン・ポッパー型層状ペロブスカイト強誘電体の構造-物性相関に関する論文が、Adv. Funct. Mater. 28, 1801856/1-12 (2018)に掲載された。この成果は、新しい強誘電体の開拓に寄与するだけでなく、強誘電相転移機構の解明につながる重要な知見である。 これまでの研究において、第一原理計算による物質探索・物質設計が非常に有効であることがわかり、研究の進展に大いに貢献している。また、国内および海外施設で測定した高精度な放射光X線/中性子回折データを使って、精密構造の決定に成功している。強誘電体の評価装置も整備されつつあり、評価手法も向上した。今後、第一原理計算-構造解析-物性評価の有機的な連携により間接型強誘電体の物質群が拡張し、このタイプの強誘電体に特有の物性・機能が見出される可能性は大いにある。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来のペロブスカイト酸化物強誘電体では、イオンの変位によって直接的に極性構造が形成され自発分極が発生する。このような、いわゆる直接型(あるいは変位型)強誘電体が、数十年間、強誘電体研究の主流を担ってきた。この流れを大きく変革するため、本研究では、従来の直接型とは異なり、「間接型」の機構に基づいて新奇強誘電体を開拓する。 間接型強誘電体の物質設計では、元素選択の自由度が直接型の場合と比べて遥かに大きく、従来では実現困難であった機能を容易に付与することができる。この観点から、今後は磁性や可視光応答性の付与による高機能化の実現を目指す。既に、磁性イオンが導入された強誘電体を発見しており、構造解析と物性評価を開始している。この方向での研究を推進することにより、高機能な強誘電体が実現する可能性は十分あると予想している。また、間接型強誘電体は、無鉛圧電体や次世代型不揮発メモリーへの展開により、低酸素社会やクリーンエネルギーの実現に寄与できる。このため、上記に拘らず広い視点で機能開拓を進める。
|
Research Products
(15 results)