2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development and mechanism elucidation of oxide half-metal with the transition temperature higher than 600 K
Project/Area Number |
16H04501
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山浦 一成 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70391216)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 吉廣 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (50584075)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 2重ペロブスカイト / 高圧合成 / Ca2MnOsO6 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代ハードディスクに記録される超高密度なデジタル情報(2Tbit/inchi^2以上)を高い精度で高速に読取るためには、磁気ヘッドの革新が必須とされる。主にホイスラーハーフメタルを中核とする新部材の開発が進展している。一方、酸化物ハーフメタルへの期待も高い。現状では、代表的なペロブスカイト型(La2/3Sr1/3MnO3)でも磁気転移温度が360 K程度と低く、転移温度の向上が課題だ。本研究では、2重ペロブスカイト型酸化物に着目し、酸化物ハーフメタルの磁気転移温度を、3か年で実装レベル(>600 K)以上に引き上げることを目標とする。また、その発現機構を明らかにする。 これまでのグローバルな研究から、5d元素を含有する場合に2重ペロブスカイト型酸化物のハーフメタル転移温度が最も高くなることが判明した(>600 K)。しかしながら最適制御や機構解明には至っていない。本課題では、最近合成された比較的転移温度が高い複数の2重ペロブスカイト型酸化物を対象に、2種類の磁性元素の秩序/無秩序配置の程度、結晶の対称性、局所構造の歪みの程度、キャリアー濃度などを系統的に変化させ、転移温度の最適制御と、その背景にある学理を調査した。また、5d元素の役割が明確な普遍的なマテリアルデザインに還元するため、周辺物質・関連物質を調査した。 H29年度に合成した2重ペロブスカイト型酸化物Ca2MnOsO6はMnとOsがほとんど秩序化せず、乱れていると思われるが、磁気転移温度は室温レベルとかなり高い。乱れが強いにも関わらず、比較的高い転移温度を示す機構に着目し、さらに高い転移温度を示す物質系の開発に結び付けるため、機構解明研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2重ペロブスカイト型酸化物Ca2MnOsO6は恐らくこれまでに合成例がない新物質だ。現状では高圧法が唯一の合成法と思われる。合成した多結晶体を乳鉢で細かく粉砕し、石英ガラス製のキャピラリーに詰め、BL15XU/SPring8の高分解能放射光X線回折装置を使用して結晶構造を調査した。リートベルト法で精密解析する過程で、MnとOsの秩序配置の程度を注意深く調査したが、明瞭な秩序化の兆候は見られなかった。ペロブスカイトのBサイトを化学量論性1:1の比率を保ったまま、かなり乱れた状態で占有していると思われる。引き続き、放射光を線源とするX線吸収分光法によって、2つの遷移金属の価数を調査した。かなり明瞭にOsは5価、Mnは3価という結果が得られた。 磁性元素の配置が強く乱れているため、磁気的相互作用は弱いと直感的に予測したが、実測では、磁気転移温度は305Kとほぼ室温であった。磁化の大きさからフェリ磁性と推定したが、中性子線回折実験などでさらに詳細に検討する必要がある。乱れの程度が強いにも関わらず、比較的高い転移温度を示す機構に着目し、さらに高い転移温度を示す物質系の開発に結び付けるため、機構解明研究を進めた。現在も継続している。 本課題の関連物質の一つとして研究を始めた水銀と鉛の酸化物(HgPbO3)は比較的大きな反磁性と半金属的な特徴を示し、予想される電子状態から大きな磁気抵抗の発現を期待したが、実験では確認できなかった。現在、原著論文が投稿中だ。2重ペロブスカイト型酸化物に限らず、スピン軌道相互作用が強い環境下にある物質の調査と新物質探索を実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2重ペロブスカイト型酸化物は2種類の磁性元素の組み合わせに応じて多様な物性を示す。本課題では2重ペロブスカイト型酸化物の広範な新物質開拓、新機能性開拓、高品質単結晶育成、精密結晶構造解析、先端物性評価に引き続き取り組む。特にスピン軌道相互作用が強い5d元素を含む新物質探索に注力し、高温酸化物ハーフメタルの実用材料シーズ開発に向けた環境を整備する。 H30年度は、前年度までの実験を継続するとともに、関連物質・周辺物質の調査を進める。例えば、関連物質Ba3NiOs2O9は、通常の固相反応法で合成すると、NiとOsが1:2の比率でペロブスカイトBサイトを秩序的に占有する六方晶の結晶構造を持つが、6万気圧の環境で合成すると、結晶構造の対称性が変化する。結晶構造の対称性の向上に伴い、約47K程度だった反強磁性転移温度が約400Kまで劇的に上昇する。磁気転移温度の向上に有効な機構を明確にするために、研究対象の一つとして継続的に研究を進める。これらの2重ペロブスカイト型酸化物の研究を通して600Kを越える転移温度を持つ酸化物ハーフメタルの物質要件を明確にする。
|
Research Products
(27 results)