2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of polymer-modified calcium phosphate coating with self-healing ability for biodegradable Mg alloys
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16H04511
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
廣本 祥子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (00343880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 智彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (50419264)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体材料 / 生体内溶解性金属材料 / リン酸カルシウム被膜 / ポリマー複合化 / 自己修復 / 細胞接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度に、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)を複合化したリン酸カルシウム(Ca-P)被覆AZ31合金に大気中で付けた傷は、Hanks液中でSPAによるCa-P析出の促進で修復されることを明らかにした。H29年度にはSPA複合化Ca-P被覆AZ31のHanks液中での低歪み速度引張り試験を行った。SPA複合化試料ではCa-P被覆のみに比べて、破断までの時間が約1.45倍に大幅に増加した。き裂発生点付近は、Ca-P被覆のみでは脆性であったのに対し、SPA複合化表面では延性を示した。SPA複合化試料でも、き裂発生点より数十um深い領域では脆性を示し、さらに深い領域は延性を示していた。AZ31は疑似体液中での水素脆化の可能性が指摘されている。これより、SPA複合化により引張りで発生したCa-P被膜のき裂が早期に修復されるため、き裂先端での水素発生もしくは水素吸収が抑制されたと考えられる。 水酸アパタイト(HAp)およびリン酸八カルシウム(OCP)被覆AZ31表面で骨芽細胞を培養した。HAp被膜では直径数十umのロッド状の結晶が内層から約0.25 umの間隔で成長しており、OCP被膜では厚さ数十umの板状の結晶が端面を上に約1 umの間隔で成長している。HAp被覆表面では細胞はよく接着、伸展して増殖できたが、OCP被覆表面では細胞の伸展が阻害され、増殖も抑制された。 SPA複合Ca-P被覆AZ31表面での骨芽細胞の細胞接着形態を観察した。SPA複合Ca-P被覆AZ31ではCa-P被覆のみに比べて細胞の伸展が若干抑制されていたが、未被覆AZ31に比べて細胞密度が高く、細胞の伸展がみられた。SPA修飾量を調整することで、Ca-P被覆Mg合金表面の欠陥修復能を向上するとともに、細胞接着を妨げない表面の実現の可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度に疑似体液中での低歪み速度引張り(SSRT)試験より、リン酸カルシウム(Ca-P)被膜に溶液中でin-situに形成されるき裂の修復にはアニオン性ポリマーが有効であることを明らかにした。修復メカニズムにおけるアニオン性ポリマーの役割の詳細については今後の検討が必要であるが、本課題の研究目的である「親水性ポリマーの複合化によるCa-P被膜の欠陥修復能の向上」に対して十分な指針を与えたと考えられる。 一方、SSRT試験に用いたアニオン性ポリマーのポリアクリル酸の生体適合性は必ずしも高くなかった。ポリアクリル酸よりも生体適合性に優れたアニオン性ポリマーへの切り替えが必要である。そこで、細胞適合性が良好な中性ポリマーの末端をアニオン性の官能基で置換することで、ポリアクリル酸と同様の効果を期待した。H29年度は共同研究者に合成してもらったアニオン性官能基で置換したポリマーを用い、予備実験としてMg合金に直接ポリマーを修飾し、細胞培養液中での腐食試験を行った。末端基置換ポリマーの方が元のポリマーよりもMg合金の耐食性を向上させた。この結果は、本研究課題当初の予想範囲を超える結果である。 上記の結果を鑑みて、全体的にはおおむね順調に研究が進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度に見いだしたポリマーのみによる表面修飾でMg合金の耐食性が向上する結果を本研究課題に取り入れることで、リン酸カルシウム(Ca-P)被膜が不向きなデバイスのためのMg合金の表面処理も視野に入れ、研究を推進する。血管用ステントは材料表面にリン酸カルシウムが沈着すると血栓の原因になるため、ポリマーのみ修飾Mg合金が適していると考えられる。 H30年度は、ポリマー複合Ca-P被覆Mg合金に加えポリマーのみ修飾Mg合金の疑似体液中での低歪み速度引張り(SSRT)試験や、それぞれの表面での細胞適合性評価を行う。
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