2017 Fiscal Year Annual Research Report
パーライト変形能の起源解明 -脆性セメンタイト相の微小体積力学特性-
Project/Area Number |
16H04516
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡本 範彦 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60505692)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脆性材料 / セメンタイト / サイズ効果 / 塑性変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェライト相とセメンタイト相のラメラ状組織であるパーライトは工業的に最も重要な脆性/延性積層構造であると言える.パーライトのラメラ間隔が極めて小さくなるとセメンタイト相も室温で塑性変形を示すことが知られているが,なぜ脆性的なセメンタイト相が塑性変形を示すようになるのか,その靭性化機構の詳細は不明である.本研究では,セメンタイト相単結晶の微小力学特性評価(塑性変形能・弾性定数・破壊靭性)のみならずサブミクロンサイズのパーライト薄膜試験片のSEM内その場観察引張試験を行うことにより,パーライト中の脆性セメンタイト相の靭性化機構を解明することを目指している.本年度は,微小試料加工技術(FIB法)やナノインデンターベースの微小試験技術を直方晶系のセメンタイトFe3C相に適用することにより,昨年度見出した(010)[100]容易すべり系以外に,(001)[010], {011}[100]や{110}<110>すべり系も活動することを明らかにした.(010)面すべりの一般化積層欠陥エネルギーを第一原理により計算したところ,[001]方向すべりよりもバーガースベクトルの長い[100]方向すべりが選択されるのは,[001]方向の積層欠陥エネルギーが極めて大きいことに起因することがわかった.今までに見出したすべてのすべり系が活動しても5つの独立な歪成分を生み出すことができずvon Mises条件を満たさない.パーライト中でセメンタイト相(多結晶)が変形能を示すことから,[001]成分を含むすべり系も活動すると予想している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り,第二年度(平成29年度)にセメンタイト相のすべり系を調査し,第一原理による積層欠陥エネルギー計算を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
X線非弾性散乱法によりセメンタイト相単結晶弾性定数の測定を行う.またセメンタイト相とフェライト相の結晶方位関係を確認した上で,パーライトの微小体積変形試験を行う.
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