2016 Fiscal Year Annual Research Report
固体高分子形燃料電池に用いる電極触媒のオペランドTEM観察による劣化機構解明
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16H04528
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Research Institution | Japan Automobile Research Institute |
Principal Investigator |
清水 貴弘 一般財団法人日本自動車研究所, FC・EV研究部, 研究員 (90409657)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電極触媒 / 透過電子顕微鏡 / ナノ材料 / 燃料電池 / オペランド観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで不可能だった燃料電池作動中の電極触媒の構造変化を可視化し、詳細な劣化メカニズムを明らかにすることを目的とする。平成28年度は「オペランドTEM観察技術」の開発に取り組んだ。 はじめに、TEM内に固体高分子形燃料電池(PEFC)の実使用環境を構築するため、PEFCで使用する2種類の反応ガスを同時に導入する技術、膜電極接合体(MEA)の電圧測定・電圧印加を行う技術について検討した。試作した試料ホルダの先端部の形状を変更し、試料を強固に固定し、配線と良好な接触状態が得られる構造とすることにより非点収差や試料ドリフトの軽減を行った。その結果、MEAの電気化学測定と同時に電極触媒層の構造変化を動的にTEM観察することが可能となった。JARI製MEA実サンプルに反応ガスとして水素および空気を供給した結果、最大0.8 V程度の電圧発生を確認した。 次に、開発した技術をもとにして、MEA触媒層の構造変化を観察した。発電条件や耐久性評価試験条件に応じた電極触媒の構造変化を確認するため、耐久性評価試験の一例として、PEFCの起動停止を模擬する電圧印加試験を行った。初期と1,000サイクル後に同一視野をTEM観察し、電極触媒層中のアイオノマーの形状変化、電極触媒(Pt/C)のPt粒子やカーボン担体の位置変化等の構造変化が生じたことを確認した。 以上の取り組みから、PEFCを機能させながら電気化学測定と電極触媒層の構造変化解析を両立する技術の開発に成功した。従来のその場(in situ)TEM観察では実現できなかった進歩した解析法として、本研究で開発した「オペランドTEM観察技術」がMEAの劣化メカニズム解析に有効に活用できることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となるTEM観察と電気化学測定を同時に実施する技術の開発が予定通り進捗し、「オペランドTEM観察技術」が確立されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
オペランドTEM観察の結果、電位サイクル試験前後の電極触媒の構造変化が想定よりも小さいことが明らかとなった。この結果は試料の置かれる環境の違いに起因することが考えられたため、反応ガスの圧力や湿度を実際の条件に近づけることが課題である。そこで、次年度はこれまでに開発したEx situ TEM観察技術の特長を生かして反応ガスを大気圧、加湿条件とし、試料の電気化学測定と反応前後の同一視野のTEM観察を行う計画に変更する。
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