2016 Fiscal Year Annual Research Report
cBN/hBN混相ナノ結晶窒化ホウ素膜の形成による難加工材用金型の開発
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16H04540
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
楊 明 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (90240142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 徹英 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (70614543)
森河 和雄 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 主任研究員 (60463048)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 薄膜プロセス・メッキ・配線 / テクスチャードフィラメント / HFCVD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は医療用チタン材料のマイクロフォーミング金型に実耐久性と安定した低摩擦摺動を両立する立方晶/六方晶混合相ナノ結晶窒化ホウ素膜形成プロセスを確立することを目的とし、今年度は以下の項目を実施した。 (1) cBN/hBNの混合相ナノ結晶膜形成のために熱フィラメントCVD(HFCVD)プロセスに用いるフィラメント表面構造パターン形成を行った。 Taフィラメント表面にマスキングした後、ダイヤモンド粒子を含む溶液を吹付け、真空チャンバーで熱処理することで、フィラメント表面に適当な間隔を有するマイクロオーダーの突起パターンを形成した。マスキングの形状寸法を変化させることで、フィラメント表面にダイヤモンド粒子パターンの面積や間隔を制御できた。 (2) テクスチャードフィラメントの創製とその後のBN成膜プロセスを同一チャンバー内での処理を可能とし、かつALDによる前駆体およびプロセスガスの逐次フロー制御機能を有する成膜装置を設計・製作を行った。前工程で、テクスチャードフィラメントの熱処理を可能にしたこと、さらに最大温度1000℃で基板を加熱できるようにしたこと、また、バイアス電圧を付加することにより、成膜時熱電子エミッションを与えることを可能にした高機能なHFCVD装置を完成した。 (3) テクスチャードフィラメントを用いて、BN成膜を行った。フィラメント温度、フィラメント基板間距離、前駆体ガス流量およびアンモニアガス流量比、プロセス圧力を成膜パラメータとした。また、成膜後の膜分析として、FT-IR分析、SEM-EDX組成分析、TEMによる結晶組成観察を行った。FT-IRやSEM-EDX分析の結果から、従来のBN膜と比較して、hBNに対するcBNの比率が向上したことが分かった。また、TEM観察の結果から、多くのBN結晶が観察され、膜の結晶性が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに開発した装置およびテクスチャードフィラメントを導入することにより、確実に成膜プロセスの性能が向上した。得られたBN膜の結晶性やcBN/hBNの比率などの評価パラメータに関しても、従来のものより改善された。後は各種プロセスパラメータの最適化を図り、目標であるBNナノ結晶相パターンおよびその膜成長過程を制御することを実現できれば、実用化に近づくと思われ、ほぼ当初の計画通りに進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、当初の計画通りに、まずは各種プロセスパラメータがBN薄膜における結晶相の体積比に及ぼす影響を詳細に検証し、より低エネルギーでcBN形成が可能な前駆体ガスの開発を行い、これと併せて反応性ガスやパージガスの選択やその供給パルス時間の調整を行う。またその他重要な関連パラメータとして、フィラメント温度、基板-フィラメント間距離、基板温度、ガス種(前駆体ガスの変更も考慮に入れる)、ガス圧力、ガス流量比をそれぞれ変更し、得られる皮膜特性を前述と同様各種分析方法により検証する。これらを踏まえて、各種プロセスガスの供給シーケンスを再調整した上で、所望のナノ結晶BN膜の創製を行う。混相ナノ結晶BN膜の膜分析と併せて、機械的特性としてナノインデンテーション硬さ試験、スクラッチ試験およびX線回折による内部応力測定を行う。さらに、創製したBN薄膜の基礎的摩擦・摩耗特性評価として、ボールオンディスク型摩擦摩耗試験を行う。摺動相手材としては、純チタン材料を用いて、その繰り返し摺動に伴う反応性と薄膜の耐摩耗性および摩擦特性を評価する。
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