2017 Fiscal Year Annual Research Report
合金の内部酸化による金属-酸化物複合材料の組織制御と新規素材プロセスへの応用
Project/Area Number |
16H04544
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 正史 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70143386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 秀顕 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (10581746)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金属生産工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,合金の内部に酸素が浸透して微細な酸化物が形成される内部酸化と呼ばれる現象について,反応の駆動力を電気化学的に制御しながら速度を定量的に評価することを目指している.本年度は,銀スズ系合金の内部酸化速度を評価する手法を確立するために,ジルコニア系固体電解質のるつぼを用いたセルでの電気化学測定を実施した.アルゴン中で所定の金属原料をジルコニアるつぼ内で溶融・徐冷し,さらにこの合金の上面およびジルコニアの外壁にそれぞれ電極とするための銀ペーストおよび銀線を取り付けた.以上の手順で作製したセルと,内部酸化の進行が予想される温度まで電気炉内で加熱し,るつぼの内側はアルゴン雰囲気,外側は空気とした状態で二電極間の電位を制御し,電流の測定を行った.サイクリックボルタンメトリーおよび一定電位での電解を実施した際の挙動から,外部から与える電圧によって合金側へ酸素を供給し,酸素が浸透する速度を評価することが可能であることが確認された.また,銀スズ系合金に別の金属を少量添加することで,内部酸化の進行を促進することが電流値の増大として示唆された.現在の課題としては,上記のとおりるつぼ型の固体電解質内で凝固した固相の合金を電極とする測定を行っているため,合金と電解質との接触を制御することが困難となっている.これを改善するために,平面状の固体電解質に板状の合金を密着させるように変更し,接触状態の制御を容易にするとともに,一次元の拡散が支配する反応を観察できる測定を今後実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した実験手法での測定が原理的には可能であることが確認され,さらに元素添加の影響も評価できることが示されている.おおむね順調に進行しており,次年度に測定の精度を高められるように装置の改良を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,固体電解質を用いたセルの構成を最適化することを目指し,平面の固体電解質を隔てて合金側に酸化を供給する.より信頼性の高い測定を実現し,試験時の温度や酸素供給について検討しながら,内部酸化挙動の温度依存性や,合金の種類ごとの酸化機構の違いを調査する.さらに,反応後の合金の組織・構造を電子顕微鏡や X 線回折により調査し,内部で生成する酸化物の相および形態について明らかにする.これらの情報を統合しながら,熱力学的な考察を行うとともに反応モデルを仮定し,実際に観測された反応速度が妥当かを検証して内部酸化の機構を理解する.また,合金の内部酸化を促進する第三成分の添加や,酸化前の合金組織および酸化力の影響を調査し,内部酸化の産業的な応用について探索する.
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