2016 Fiscal Year Annual Research Report
鋳造欠陥制御の技術構築に向けたダイラタンシーを発現する固液共存体の変形挙動の解明
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16H04546
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳楽 知也 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (00379124)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 固液共存体 / ダイラタンシー / 鋳造欠陥 / 高温割れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、固体と液体が共存した組織(固液共存体)の変形によって生じる鋳造欠陥の制御技術の構築に向けて、放射光X線イメージングを利用して、固液共存体の変形過程の時間分解その場観察を行い、ダイラタンシー(体積膨張)が発現する特異な固液共存体の変形挙動の解明を行う。本年度は、Al-Cu合金を対象として、固液共存体の引張変形挙動をミクロンスケールでその場観察可能な実験装置の開発を行った。固相率60%の固液共存状態の組織を作製し、一定のひすみ速度で引張変形を行うと、局所的に固相間隙が拡大し、面状の液相領域が形成した。変形がさらに進むと、引張応力に垂直面内において、面状の液相領域が連結し、変形の局在化の結果、割れが形成されることが明らかとなった。また、固相粒子の運動の定量評価により、引張方向のひずみ速度は、僅かなひずみで局在化しており、変形に伴い、その局在化した領域が連結および発達し、最終的にその領域で割れが形成されていた。 一方、Fe-C合金を対象として固液共存体の圧縮変形挙動をミクロンスケールでその場観察可能な実験装置の開発も行った。2次元固相率が約90%の固液共存状態の組織を作製し、一定のひずみ速度で圧縮変形を行うと、試料全体が樽状に変形し、試料の角から45度方向に近い方向に沿って、割れが形成されることが明らかとなった。また、個々の固相粒子の運動に着目すると、固相粒子の並進・回転運動による再配列が起きており、固相率が周囲より低いバンド状の偏析帯が形成されていた。つまり、圧縮変形において、せん断応力が最大となる45度方向において、せん断ひずみが局在化していた。 以上、固液共存状態の引張および圧縮変形挙動のその場観察により、ミクロンスケールで欠陥形成機構について明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線イメージングを利用して固液共存状態において引張および圧縮変形過程のその場観察装置の開発を行った。これにより、引張および圧縮変形過程をミクロンスケールで、変形挙動を時間分解でその場観察することが出来、引張と圧縮変形挙動の特徴や違いについて明らかにすることが出来た。また、圧縮変形においては、Al合金とFe合金の2種類の場合で実験を行い、試料の依存性についても調べることが出来た。これらの研究により、これまでのせん断変形を含めて、引張、圧縮の三つの変形モードについて系統的な理解が得られた。 X線イメージングを利用したせん断変形のその場観察において、結晶形態を樹枝状のデンドライト組織の場合で実験を行った。固相間の相互作用により、デンドライトのアームの溶断がせん断領域において頻繁に起こっており、粒状の固相粒子の場合の変形挙動と著しく異なっていることが明らかとなった。さらに、せん断変形過程中に発生する応力をその場観察と同時に測定できる装置の開発も行い、ミクロな組織形成とマクロ力学特性の関係についても明らかにすることが出来た。当初計画していたモデル実験については、固相粒子の形態などの初期組織や変形モードの影響に関する十分な知見を得ることが出来なかった。以上の点を踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでのせん断変形に加えて、圧縮、引張変形においても固液共存体の変形過程において発生する力学特性の評価を中心に研究を実施する。その場観察で得られるミクロな組織変化とマクロスケールでの力学挙動の統合は、新たな鋳造欠陥制御の指針の確立に向けた本研究の主要な課題の一つであり、せん断、引張、圧縮の3つの全ての変形モードにおいて、系統的な評価を行う。 また、その場観察用の薄片状の試料では、二次的な変形であるが、数センチ程度のバルク材料を用いて、三次元的な変形の力学特性の測定も行い、その場観察での力学特性の結果に対して妥当性の評価を行う。そこで、Al-Cu合金やSn-Bi合金を対象として、固液共存状態でせん断力を印加し、せん断応力や見掛けの体積膨張(ダイラタンシー)の起源となる法線応力を評価可能な装置の開発を行う。この時、固相率や結晶形態などの初期組織やひずみ速度が力学特性に及ぼす影響について調べる予定である。
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Research Products
(7 results)