2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04556
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
松本 道明 同志社大学, 理工学部, 教授 (10157381)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 反応・分離工学 / イオン液体 / 水性2相 / 抽出 / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体は,従来の溶媒にはない性質を持つ新たな媒体であるが,イオン液体そのもののコストが高く,経済的には回収再利用する必要があるが,それらの蒸気圧が非常に高いことから,その回収に問題があった.そこで本研究では安価でかつ合成が容易で,回収可能なプロトン性イオン液体およびイオン液体類似体である融点降下溶媒(DES)を用いて新しい2相分離系を構築しようとするものである.本年度はその目的達成のために以下の検討を行った. 1)プロトン性イオン液体から形成される水性2相系を用いたジオールの分離:バイオポリマーの原料である1,3-プロパンジオールの分離をプロトン性イオン液体と塩から形成される水性2相系を用いて行った.ピロリジン-プロピオン酸からなるプロトン性イオン液体が効果的であることが分かった. 2)DESから形成される水性2相系を用いた蛋白質の分離:当初分離剤としてより環境負荷の小さな糖を用いてきたが,水性2相は形成されず代わりに塩を用いることで,DESからなる水性2相系においてアルブミンの抽出に成功した. 3)プロトン性イオン液体を抽出溶媒にした木材チップからの多糖抽出:これまで木材チップからセルロースなどの抽出は主に水熱法が用いられてきたが,セルロースよりも等への分解が容易なヘミセルロースを選択的に抽出する計について検討を行った.ピロリジン-酢酸からなるプロトン性イオン液体が効果的であることが分かった. 4)DESを含む高分子膜によるアミノ酸の分離:これまでイオン液体を含む膜による物質分離が行われてきたが,DES膜については初めての試みである.テトラブチルアンモニウムブロミドとデカン酸からなるDESからなる膜により,トリプトファンの能動輸送が達成できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ,予定していた回収可能なイオン液体(プロトン性イオン液体や融点降下溶媒)を用いた分離に関する検討が順調に進んでいる.しかしプロトン性イオン液体物性に関する測定が測定装置の不備で十分に行えなかった.またタンパク抽出における検討においても当初は分離剤として糖を予定していたが,糖は分離剤として働かなかったため塩系で抽出実験を行った.一方でプロトン性イオン液体を用いた木材チップからのヘミセルロース抽出,DES膜によるトリプトファンの分離などこれまで報告されていない分離系を見出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,「現在までの進捗状況」で述べたように十分行えなかったプロトン性イオン液体の沸点などの物性の測定を,装置を一新して試みる予定である.そのほか研究計画書に記載した事項は若干の系の変更はあるものの計画通りに遂行できるものと考えられる.さらにプロトン性イオン液体のヘミセルロース抽出やDES膜分離などは新規な分離系であり並行して,その分離系の特徴を明らかにしていく予定である.
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