2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanistic study of adhesion and uptake of particles onto/into macrophages
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16H04557
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
新戸 浩幸 福岡大学, 工学部, 教授 (80324656)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体ソフト界面 / タンパク質コロナ / 相互作用 / 大食細胞 / 粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
培養細胞に対する微粒子の曝露方法を工夫した上で、新規導入したフローサイトメーターを駆使して解析することによって、細胞表面への微粒子の付着量を単一細胞レベルで評価する手法を確立した。微粒子として、蛍光ラベル化された100 nmの無修飾シリカ粒子を用い、大食細胞としてマクロファージ様細胞株(J774.1)を用いた。生体由来タンパクとしてウシ血清アルブミン (Ab)、免疫グロブリンG (IgG)、フィブロネクチン (Fn)、人工高分子としてポリエチレンイミン (PEI) をそれぞれ用いた。これらの強固なタンパク層(または人工高分子層)で被覆されたシリカ粒子の懸濁液を調製した。 異なる表面被覆物質をもつシリカ粒子の大食細胞への付着量は、IgG > Fn > PEI > Abの順に大きかった。この結果は、IgG被覆粒子を除けば、コロイドプローブ原子間力顕微鏡法によるマイクロ粒子の接着力の測定結果(Fn > PEI > IgG > Ab)と一致した。Ab被覆粒子が最小の接着力・付着量を示した原因として、Abは生物的に不活性のため細胞表面と結合しにくかったことが考えられる。FnとPEIによる被覆粒子が大きい接着力・付着量を示した原因として、Fnは細胞接着性タンパク質の一種であるため細胞表面に存在するインテグリンと特異的に結合したこと、PEIは正電荷を有し、負帯電している細胞表面と静電引力が働くこと、が考えられる。IgG被覆粒子があまり大きくない接着力を示したものの、最大の付着量を示した原因として、IgGは細胞表面に存在するFc受容体によって認識されるが、その結合力は(細胞接着に関与する結合と比較すると)強くないことが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは、粒子径5~15 μmの単一粒子がカンチレバー先端に固定化されたコロイドプローブと原子間力顕微鏡を駆使して、「培養細胞がマイクロ粒子に対して示す初期の接着力」を測定し、この接着力に影響する種々の因子(細胞の種類、細胞周期、粒子の表面官能基や表面被覆タンパクの種類)を検討してきた。このコロイドプローブ原子間力顕微鏡法の最大の利点は、粒子―細胞間相互作用力の単一粒子・単一細胞レベルの直接測定が可能であることである。一方、その欠点として、実験者には熟練した技能が要求されること、熟練した実験者であっても測定までの準備と実際の測定には長時間を要すること、粒子径が数μm以下のサブミクロン粒子やナノ粒子を1個だけカンチレバー先端または探針先端に固定化することは不可能ではないものの極めて困難であること、などが挙げられる。 本研究課題では、培養細胞に対する微粒子の曝露方法を工夫した上で、フローサイトメトリーを駆使して解析することによって、「細胞表面への微粒子の付着量」および「細胞内部への微粒子の取込量」を単一細胞レベルで効率的に評価できる技術を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果によって、大食細胞への微粒子の付着・取込は、粒子の被覆タンパク層の種類に大きく影響されることがわかった。今後は、以下の実験(1)~(3)により、粒子径、表面官能基、被覆タンパク層の有無が、大食細胞への粒子の付着・取込の「力」、「量」、「速度」、「メカニズム」に対して、どのように影響するのかを明らかにする。 (1)フローサイトメーターを駆使して、種々の粒子径・表面官能基をもつ粒子(蛍光分子内包)について、大食細胞への付着・取込の量・速度、それに及ぼす被覆タンパク層の影響を単一細胞レベルで網羅的に評価する。 (2)培養装置付きの共焦点レーザー走査顕微鏡システムにより、単一粒子・単一細胞レベルのライブイメージングを行う。ここでは、細胞膜や細胞小器官の蛍光染色剤などを併用し、付着・取込プロセスとそれに及ぼす被覆タンパク層の影響を単一細胞レベルで検討する。付着・取込後の細胞表面を詳細に観察するため、固定化処理などを行った細胞試料について、走査型電子顕微鏡による観察を行う。 (3)粒子1個を原子間力顕微鏡カンチレバーに固定化した後、血清タンパクをその粒子表面に吸着させる。この「コロイドプローブ」を原子間力顕微鏡・光学顕微鏡複合装置にセットし、粒子-大食細胞間の相互作用力を測定する。
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Research Products
(11 results)