2017 Fiscal Year Annual Research Report
金属間化合物表面の特異性を利用した触媒機能の解明および高機能触媒の創生
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16H04565
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小松 隆之 東京工業大学, 理学院, 教授 (40186797)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属間化合物 / 選択的水素化 / 合金 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、Rhと第2元素との金属間化合物を触媒に用いて、分子内にC=C結合を2本もつジエンの選択的水素化について検討した。シリカ担体上に共含浸法で金属を担持し、水素還元により金属間化合物微粒子の形成を試みた。得られた金属粒子が、単一相の金属間化合物RhM(M=Zn, Fe, Pb, Biなど)であること、数nmの粒子径をもつことを明らかにした。これらを触媒に用いて、trans-1,4-ヘキサジエンの水素化を行った。Rh/SiO2を触媒に用いると、主生成物としてtrans-2-ヘキセンが生成したが、cis-2-ヘキセン、1-ヘキセン、ヘキサンなども生成し、trans-2-ヘキセン選択率は70~75%であった。一方、金属間化合物RhBiを用いると、転化率15~99%の間で90%以上の高いtrans-2-ヘキセン選択率が得られた。すなわち、RhBiは分子内の2本のC=C結合のうち、末端のC=Cを選択的に水素化するだけでなく、trans-体からcis-体への異性化およびヘキサンへの逐次的な完全水素化を抑制していることが判明した。 次に、リンと遷移元素との金属間化合物を触媒としたトルエンの水素化について検討した。Ruの場合Ru2Pを形成することによりトルエン転化率が約10倍向上した。また、Ru上で副生したベンゼンが、Ru2P上では全く生成しなかった。Ru2P粒子の表面では、原子半径の異なるPとRuが交互に配列していることにより原子レベルの凹凸が形成される。このような表面との相互作用により、吸着トルエン分子中の炭素-炭素結合による平面構造が歪み、シクロヘキサン環の構造に近づくと考えられる。これにより活性化エネルギーが下がることが金属間化合物Ru2P形成による反応速度(転化率)向上の原因であると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
担体としてアルミナを用いて液相還元法により調製した触媒が、水素中微量COの選択酸化反応に対して、当初の想定を越える触媒活性を有することを発見した。液相還元法における可変なファクター(液温、金属塩の種類と濃度、還元剤の種類と濃度など)の影響と再現性について検討した。さらに触媒活性発現の原因を明確化するためのキャラクタリゼーションも可能な限り行った。これにより研究計画に4か月程度の遅れが生じた。そのため、年度末に予定していた実験(スーパーコンピューターを用いた吸着状態のシミュレーション、同位体実験等)を遂行することができず、2018年度に持ち越しとなった。 一方、上記の想定外の高活性については、再現性が思い通りに取れなかったが、種々の検討から当該触媒が高活性を示したというよりは、他の一部の触媒に対して、その活性を過小評価していた可能性があることが判明した。その最大の要因は、触媒調製後から反応使用時までの間の空気酸化である。水素分子の解離能力が高い白金やパラジウムを含む触媒の場合、保存中に酸化されても反応時の触媒前処理である再還元処理により容易に金属状態に戻る。一方、ニッケル系金属間化合物触媒などでは、水素還元を800℃以上で行わないと0価まで還元できない場合があることが判明した。得られたデータを基に、触媒の保管条件および反応実験前の還元処理条件を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度実施を予定していたが上記理由で来年度に繰り越された実験、すなわちスーパーコンピューターを用いた吸着状態のシミュレーションおよび同位体置換した反応物分子を用いた反応速度論的解析、これらを優先して行う。 次に今年度見出した1,4-ヘキサジエンの末端選択的水素化に高い選択性をもつRhBi/SiO2触媒を、各種のジエン(1,3-ヘキサジエン、4-ビニルシクロヘキセンなど)の選択的水素化に用い、基質適応性を明らかにする。また、この触媒の特異な性能が、主に活性点の幾何学的構造に起因する立体的効果であると想定されるため、反応物分子の吸着における始状態、生成物分子の脱理前の終状態だけでなく活性化された中間状態について計算化学的手法を適用する。また、吸着分子のIRスペクトル測定、XAFSによる金属間化合物の酸化状態・配位状態の推定、同位体を用いた反応速度論的検討を行う。
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