2017 Fiscal Year Annual Research Report
親/疎水性ナノ空間を併せ持つ有機-無機ハイブリッド型多孔体の開発と触媒への応用
Project/Area Number |
16H04569
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
山本 勝俊 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60343042)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 拓史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (60371019)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機-無機ハイブリッド / 親疎水性 / 脂質二重層 / 多孔体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新しい有機-無機ハイブリッド型層状シリケートを創製し、その材料応用について検討する。平成28年度の研究が順調に進行したことから、平成29年度も計画通りに新規多孔質材料の開発・解析を継続するとともに、得られた多孔性物質の触媒応用の可能性を調べた。 架橋型有機シランを原料とした合成ではいくつかの未知生成物が得られたが、結晶性の高いものは多くなく今後の合成条件の最適化が必要である。一方、末端有機基を持つ有機シランを原料に用いたところ、比較的結晶性の良い未知生成物を数多く得ることができた。多孔性を示すものも存在し、今後のさらなる成果が期待できる。得られた物質のX線結晶構造解析も順調に進んでおり、KCS-3をはじめとしたいくつかの未知物質の結晶構造決定に成功した。本研究の合成手法でこれまでに得られた物質は二次元層状シリケートを基本とした構造を持っていたが、平成28年度の研究で得られたKCS-7はこれらとは異なる三次元構造ユニットを持つ可能性が本年度の構造解析研究で提案された。新しい結晶化ルートを示唆する結果であり、本研究での物質合成の新たな展開を期待させる。 KCS-2には結晶骨格内の4配位Alとそれに応じた骨格外Na+が存在することから、イオン交換による固体酸点の形成が期待できた。そこでNH4Cl水溶液中で処理したところNa+はほぼ完全にNH4+へと交換できた。Na+はH+ともイオン交換可能であり、酢酸処理によりほぼ完全にH+へのイオン交換が進行した。結晶構造の熱安定性は若干低下したが、NH3-TPDで強い固体酸性が確認され、液相酸触媒反応などへの適用が可能と考えられる。KCS-2のシラノール基をアンカーとしたTiの固定も試みたが、得られた物質は1-ヘキセンの過酸化水素酸化に触媒活性を示さなかった。Tiが6配位状態で導入されたため酸化触媒活性を示さなかったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規多孔質材料の合成・解析は順調に進行している。架橋型有機シランを原料に用いた合成だけでなく、末端型有機シランを原料に用いた合成にも展開しており、すでに多くの未知構造物質を得ることに成功している。また、非常に大きなユニットセルサイズを持つKCS-3をはじめ、いくつかの未知構造物質の結晶構造解明に成功している。KCS-3の結晶構造解析が、吸着測定から予見されていた親油的なスリット型細孔の存在を裏付けたように、物質合成と結晶構造解析は相補的に本研究の進展に寄与している。 触媒への応用の検討では、研究計画通りイオン交換により固体酸性を発現させることに成功した。結晶構造の熱安定性はゼオライトに劣るが、固体酸強度はゼオライトのそれと同様に強いことを明らかにした。一方でTiを導入したKCS-2が酸化触媒活性を示すことはなかったが、シラノール基をアンカーとするTiの固定までは達成しており、研究計画での想定通り、KCS-2の親水空間への金属種の固定は可能であることが示された。今後に予定されている貴金属種の固定も十分に期待できる。 以上から、本研究は現在まで概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
材料合成はここまで順調に進んでいるため、平成30年度も同様のアプローチでの合成を継続する。原料シランの架橋有機基が変化するとシリケート層の結晶構造も変化することがわかっているので、アミノ基を有する有機基を持つものなど様々な有機シランを原料に用い、結晶性物質の合成を試みる。また、すでにいくつかの新規物質の合成に成功しており、多様な試薬が利用可能な末端型有機シランを原料とした合成もさらに展開していく。得られた結晶性未知構造物質は、表面性状や多孔性を評価するとともに、粉末X線構造解析により結晶構造を明らかにする。 材料・触媒への応用では、平成29年度の研究でKCS-2に金属種を固定することに成功しているので、これと同様の手法により貴金属種の固定を試みる。得られた物質の粉末X線回折や窒素吸着測定を通じ、KCS-2の結晶構造が維持されていることを確かめるとともに、酸化-還元反応に触媒として用いて触媒活性を調べ、貴金属種に隣接した疎水的表面の触媒活性向上に対する影響を評価する。KCS-2の熱安定性を考えると比較的低温での反応に用いる必要があるため、低温高圧触媒反応への適用を想定しており、その実施のための高圧反応装置を平成30年度予算で購入することを計画している。KCS-2の構造安定性はゼオライトのそれに比べると低いため、貴金属種の固定や触媒反応の間、構造が維持できない恐れもある。その場合は、疎水的な表面への有機金属錯体の担持など、より温和な条件での固定を行う。KCS-2の外表面に担持した酵素が無担持のものに比べ高い反応性を示すことをすでに明らかにしており、ここでも触媒活性の向上を期待している。
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