2016 Fiscal Year Annual Research Report
変性タンパク質可溶化技術を利用したがん免疫治療の診断薬開発と個別化医療への応用
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16H04580
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
二見 淳一郎 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (00420498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80273358)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質工学 / 腫瘍免疫学 / 診断薬 / 化学修飾 / バイオマーカー / がん抗原 / 抗体検査 / 腫瘍免疫応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん治療において「腫瘍免疫応答の活性化」はQOLの高い延命効果の実現に重要である。腫瘍免疫応答の活性化に伴い、がん細胞内で異常に発現している各種のがん抗原に対する抗体が血液中に出現・増加するAntigen-spreadingという現象が知られおり、抗がん抗原抗体の量は腫瘍免疫応答の活性化レベルを反映するpharmacodynamic(PD)バイオマーカーとして利用できる可能性が高い。本研究ではCancer-Testis(CT)抗原を中心に130種超の全長がん抗原の生産リソースの整備を進めており、不安定で凝集しやすい物性の全長がん抗原を独自開発のS-カチオン化技術で可溶化し、診断薬・がん抗原の機能解析・ワクチン開発の基盤整備を進めている。28年度は以下の成果を得た。 (1)CT抗原を中心とした50種類の全長がん抗原をマルチプレックス磁気ビーズに固定化して腫瘍免疫応答を活性化する各種の臨床検体を用いて抗体価を測定した結果、極微量の血清から臨床効果に極めて相関する抗体価の変動が観察され、PDバイオマーカーとして利用できることを確認した。(2)大腸菌での生産が困難な全長がん抗原を、Hek293細胞で不溶性として生産させて可溶化・精製を進めるための一連のスキームを確立した。(3)各種のがん抗原に対するウサギ抗血清を取得し、自家製陽性コントロールとして利用できることを証明した。(4)S-カチオン化タンパク質を培養細胞内に効率的に導入する手法を確立した。(5)S-カチオン化技術で用いる化学修飾技術を応用して、タンパク質の熱安定性を評価する手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3年計画の1年目として、一部計画以上の成果を得ることができた。全長がん抗原を固定化した磁気ビーズを用いたAntigen-spreading測定では、経時的な抗体価の測定により腫瘍と免疫の戦いの状況がリアルタイムに解析できるリアリティが確認できた点は特筆すべき成果であり、実用化に向けて弾みがついた。50種類の全長がん抗原に対する抗体測定から各患者で出現する抗がん抗原抗体の種類の個人差が非常に大きく、がん抗原リソースのさらなる拡充が望ましいことが確認された。大腸菌生産系での取得が困難であった全長がん抗原がHek293細胞で量産可能なこと、抗体検査診断薬に必要な自家製陽性コントロール血清の整備が進んだことなどから、今後の研究開発に向けた技術基盤が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍免疫応答の活性化を測定する抗体検査診断薬の有用性を証明する実験を進めるとともに、本診断薬に搭載できるがん抗原を拡張する。全てのがん抗原に対する陽性コントロール血清を調製し、診断薬として標準化できる体制を整える。様々な臨床検体を用いた抗体測定が重要であり、共同研究の推進や公的バイオバンクの活用により測定データ数を拡張する。S-カチオン化法により調製される全長・水溶性がん抗原は、がん抗原の機能解析やワクチン開発、細胞機能の人工制御といった多岐にわたる利用・応用が可能であり、医用工学的な応用に向けた基礎検討を拡張・深化させる。
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