2018 Fiscal Year Annual Research Report
キャビテーション噴流による水中衝撃波の生成・制御に関する研究:舶用技術への新展開
Project/Area Number |
16H04600
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
阿部 晃久 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (50221726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 茂 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (30208136)
藤本 岳洋 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (60314514)
三村 治夫 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (90190727)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 流体工学 / キャビテーション / 衝撃波 / 混相流 / 衝撃波生成周波数 / キャビテーションエロージョン |
Outline of Annual Research Achievements |
衝撃波の応用研究は、幅広い分野で推進されており、様々な応用活用技術が確立されているが、我国の経済や産業の基盤を支える海事分野では、衝撃波を活用した技術の開発事例は見られない。本研究では、海事産業における新たな衝撃波活用技術の創出を目的として、キャビテーション噴流による衝撃波の生成に着目し、水中衝撃波の効果的な活用を促すための制御技術を確立することを目的としている。本研究成果は、主にバラスト水処理、船底付着生物除去などの海事分野の諸問題を解決する技術に直結し、新規の応用技術の創出に繋がると考えられる。 キャビテーション噴流を用いた付着物除去に関する実験的検討について実施した。実験装置を整え、一定水圧の下、穴径1 mmのオリフィス板を使用し、キャビテーション噴流による汚れや異物の除去効果を観測するために、可視化観測、生成される気泡サイズ、気泡の寿命、気泡運動によって誘起される衝撃波の生成位置と生成周期に関する検討や、圧力計測によって圧力変動を調査するとともに、噴流ノズルと対象物体との最適な距離などの関係を調査した。可視化実験では、噴流周りの流れ場の観測において、光学可視化法により、キャビテーション噴流中の衝撃波の生成条件などの観察を行った。また、圧力計測や塗装を施した試験片の塗装面損傷状態等を観測し、最も効果的に衝撃波が作用する位置について同定した。その結果、本研究で用いた実験装置では、ノズル出口から20 mmの位置で数千Hzオーダーの衝撃波生成周波数が得られたと共に、同位置における塗装面の損傷が最も顕著に現れる結果が得られた。布の粒子状付着物に対する実験では、キャビテーション噴流の衝撃波生成現象の利用による付着物除去効果が明確に示された。その他、衝撃負荷がPMMA材料に作用する際に発生する応力波の伝播挙動について有限要素法による解析を試み、弾性体内の波動現象について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度計画は、前年度の実験に引き続き、同じ実験装置を用いて、塗装を施した試験片のエロージョン実験を実施した。ノズル出口から20 mmの位置において、キャビテーション噴流に対して垂直に試験片を設置した。その結果、数千Hzオーダーの衝撃波生成周波数が得られ、同位置で顕著なキャビテーションエロージョンが発生することが確認された。また、計測された水中衝撃波圧力の最大値は、約15 MPaに達した。さらに、衝撃波生成周波数分布やエロージョンの発生分布から、キャビテーション噴流の中心から半径5 mm以内に明確な効果が得られる可能性が示唆された。これにより、船底付着物除去のためのノズルの位置や噴流の入射角度などの実験条件を定めることが可能となった。研究成果としては、ジャーナル論文2件、国際会議1件、その他論文2件、国内学会4件の発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
キャビテーション噴流を用いた付着物除去に関する実験的検討について継続実施する。本実験装置を用いて穴径1 mmのオリフィス板から噴射されたキャビテーション噴流の衝撃波発生周波数とエロージョンの影響範囲を明らかにしたことから、複数穴のオリフィス板から生成されるキャビテーション噴流に対しても同様の調査を行い、単一穴のキャビテーション噴流との違いについて衝撃波周波数とエロージョンの関係および発生する衝撃圧の強さなどについて分析する。可視化実験では、噴流周りの流れ場の観測において、PIVや時空間微分法を用いた定量化手法の検討を試みる。それらにより、キャビテーション噴流による衝撃波の生成メカニズムおよび衝撃波強さの評価、衝撃波生成条件の同定および強さに関する制御方法について引き続き検討する。また、一方、船底付着生物の除去の観点から、最も効果的な条件の下で、キャビテーション噴流の付着防止効果について実験的検証を試みる。同時に、海洋菌体に対する殺菌効果の検討も開始する。数値計算では、液体中に発生する衝撃圧の力学的変動を境界条件として、衝撃圧が金属やPMMAなどへどのような力学的影響を与えるのかについて有限要素法を中心としたシミュレーションを実施し、弾性体内の波動伝播と材料の変形挙動についても検討を行う。
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