2016 Fiscal Year Annual Research Report
MgOによる重金属類汚染土壌の不溶化プロセス解明と長期安定性評価
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16H04615
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
新苗 正和 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (50228128)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 汚染土壌対策 / 不溶化 / 重金属類 / 酸化マグネシウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に実施した研究の成果として、酸化マグネシウム(MgO)による鉛、フッ素およびヒ素(V)の不溶化プロセスに関する知見である。MgOを添加し不溶化処理した鉛の場合、溶出しやすいイオン交換態として土壌に収着する鉛が減少し、炭酸塩態として収着する鉛の割合が増加し、不溶化がより進行することを明らかにした。さらに、「重金属等不溶化処理土壌のpH変化に対する安定性の相対的評価方法、土壌環境センター」に準じ、さらに酸性雨に含まれる陽イオン成分を独自に含有させた実験より、鉛の不溶化効果は長期的に得られると考えられた。一方、フッ素およびヒ素(V)の不溶化プロセスは、(1)MgOの添加による土壌pHの上昇、(2)土壌pH上昇に伴う土壌からのフッ素およびヒ素(V)の溶出、(3)溶出したフッ素およびヒ素(V)のMgOによる収着、の順で進行することを明らかにした。さらに、前記の不溶化プロセスに影響を及ぼす因子として、土壌中の有機成分による影響を検討し、特にフミン酸が不溶化プロセスにおける土壌pH上昇に伴う土壌からのヒ素(V)の溶出に影響を与えることで、それに伴いヒ素(V)の不溶化に必要なMgO添加量を増加することが分かった。また、土壌中のマグネシウムイオンやカルシウムイオンを除去した土壌ではフミン酸はヒ素(V)の不溶化効果に影響を与えていないことから、土壌中のマグネシウムイオンやカルシウムイオンはヒ素(V)とフミン酸の橋渡しの役割を果たしていることなども明らかにした。次年度に、さらに土壌緩衝能などの土壌特性の影響を詳細に検討する予定である。また、セレン(VI)に関しては、MgOだけでは長期安定的な不溶化が困難であることも明らかにした。次年度は、セレン(VI)をMgOと第一鉄塩を併用することで長期安定性のある不溶化プロセスを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画は、MgOによる重金属類汚染土壌の不溶化プロセスを定量的に検討するため、フッ素、ヒ素(V)等重金属類の土壌への収着性とpHの関係、MgO添加量とフッ素およびヒ素(V)の収着性およびMgO添加量に伴うpHの上昇がフッ素、ヒ素(V)およびセレン(VI)の収着性に与える影響を明確にすること、並びに鉛、フッ素、ヒ素(V)、セレン等重金属類汚染土壌のMgOによる不溶化処理および溶出実験を実施することであった。「研究業績の概要」で述べた通り、平成28年度は予定した研究をすべて実施しすることができた。さらに、計画当初は予定していなかったが、自然由来のヒ素(V)による土壌汚染機構を解明するために、硫砒鉄鉱の溶出機構について検討し、硫砒鉄鉱からのヒ素の溶出に酸化反応あるいは硫砒鉄鉱表面に形成される鉄酸化物の形態変化が影響することを明らかにできた。また、「研究計画の概要」で述べたように、平成29年度に実施予定であった重金属類汚染土壌のMgOによる不溶化効果に与える土壌特性の影響の中で、土壌含有有機成分が不溶化効果に与える影響に関する検討も平成28年度に実施することができた。ただし、セレン(VI)の不溶化に関しては、MgOによる不溶化では長期安定性に課題があるため、平成29年度で新たにMgOに第一鉄塩を添加することによる新たなセレン(VI)の不溶化プロセスについて詳細に検討することを計画している。 以上に述べたように、当初の研究実施計画を予定通り遂行しており、実施段階で見出された新たな課題を含めて申請時に計画した検討項目に従って次年度は研究を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、汚染土壌の重金属類含有量の違いが、MgOを用いて不溶化処理を行った際のpH挙動および重金属類の不溶化効果に与える影響および重金属類の不溶化に与える土壌のアルカリ緩衝能、天然の鉄鉱物含有量などの土壌特性の影響を検討し、平成28年度の研究成果と併せて鉛、フッ素、ヒ素(V)等重金属類汚染土壌の不溶化機構を定量的に明らかにする。得られた不溶化メカニズムに関する知見を基に、重金属類の土壌、MgOおよび間隙水への分配平衡と物質収支の系統的検討を実施し、不溶化に寄与するMgO、土壌pHの上昇並びに不溶化に寄与しないMgOの割合を定量的に把握し、長期安定性に必要なMgO添加量の定量化を図る。平成29年度ではさらにMgOと第一鉄塩(塩化物、硫酸塩)の混合不溶化剤によるセレン(VI)のセレン(IV)への還元不溶化について検討を実施する。第一鉄塩中の陰イオン(塩化物イオン、硫酸イオン)がセレンの不溶化に与える影響ならびに第一鉄塩を添加することによるセレンの不溶化メカニズムを明らかにする。また、重金属類による複合汚染土壌を想定し、第一鉄塩の添加によるヒ素(V)のMgOによる不溶化に与える影響についても検討を実施する。 平成29年度までに得られた知見を基に、平成30年度に実施予定であるMgOを主体とした不溶化効果の長期安定性評価および不溶化プロセスの提案を行う予定にしている。
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Research Products
(3 results)