2016 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of ion confinement and its loss mechanism by the microwave collective Thomson scattering
Project/Area Number |
16H04620
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
田中 謙治 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (50260047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西浦 正樹 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60360616)
武村 勇輝 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60705606)
久保 伸 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80170025)
下妻 隆 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (80270487)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ波 / トムソン散乱 / プラズマ / 核融合 / CO2レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)において取得済みの77GHzのマイクロ波光源を用いた協同トムソン散乱の信号の解析を行った。その結果、77GHzを用いた実験では熱化したバルクイオンの計測とともに熱化していない高速イオンの計測も十分な信号強度により取得できていることがわかった。ただし、入射ビームと散乱ビームが交差する体積で決まる散乱体積をスキャンしたところ、ビームの交差部分がない散乱体積がゼロの状態でも信号が観測された。これは、散乱信号はプラズマ中のマイクロ波のすべての領域で散乱されており、真空容器壁で反射された多重散乱光が受信アンテナに混入したためだと考えられる。更なるSN比の向上を目指すためには、ビームの発散が小さく多重散乱の効果が小さいと考えられる高い周波数のジャイラトロンを光源とすることが望ましいことがわかった。 LHDでは電子サイクロトロン共鳴加熱用に77GHzの他に154GHzのジャイラトロンを整備している。そこで、上記、多重散乱の効果が小さい154GHzのジャイラトロンでトムソン協同散乱システムを行うために受信系を改良した。平成28年度は平成29年2月からLHDの実験を開始した。平成29年3月の実験では初期実験ながら154GHz入射による協同トムソン散乱実験を行い信号の取得に成功した。実験は計測周波数である154GHz付近で電子共鳴放射光の小さい1.375Tの磁場で実験を行った。イオン温度によるスペクトルの広がりは観測できたが、まだ明確な高速イオン成分の計測にはいたっていない。 また、平成28年度はCO2レーザー干渉計を用いた高速イオン駆動のMHD不安定性、およびCO2レーザー依存コントラストイメージングによる微視的乱流計測の整備の進めシステムを稼動させた。微視的乱流は計測できたが高速イオン駆動のMHD不安定性の計測は確認できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加熱用のジャイラトロンのアンテナおよび伝送経路を用いているため加熱実験との両立が難しく同時二視線計測は困難であることがわかった。よって、同時二視線計測の方針を変更し、1視線でプラズマ放電ごとにアンテナをスキャンすることにより異なる速度成分を取得することにした。154GHz協同トムソン散乱システムは初期データの取得にとどまっている。今後はよりイオン温度が高く、高速イオンの閉じ込めもよい高磁場でのデータの取得を行う。 平成29年3月より高パフォーマンス(主として高イオン温度)のプラズマの実現を目指した重水素実験をLHDで開始した。その結果、重水素イオン同士の核融合反応により中性子が発生し計測に損傷を与える可能性が高いことがわかった。協同トムソン散乱は計測システムを実験室の外に設置しているため中性子の影響はないが、高速イオン駆動のMHD,および微視的乱流計測を行うCO2レーザー計測はこれら中性子により検出感度が劣化する可能性がある。よって、平成28年度にCO2レーザー干渉計の検出器にポリエチレンでシールドし検出器を保護する対策を施した。 重水素実験開始後も協同トムソン散乱、CO2レーザー干渉計は稼動するようにシステムの改良は終了した。計測システムの開発はおおむね順調といえるが現在のところ、協同トムソン散乱および、CO2レーザー計測で高速イオンおよびバルクイオンの閉じ込めを解析できる物理データの取得にいたっておらず、今後の実験で物理データを取得する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ波協同トムソン散乱計測についてはまずは154GHzでの精度のよい実験データの取得を目指す。77GHzから154GHzに周波数をあげることにより、多重散乱によるノイズの混入が小さくなる。また、屈折の効果が小さくなるため高い電子密度での計測が可能となる。一方、周波数をあげることにより散乱光強度は小さくなり、また、イオン温度の高い2.75Tでの実験を行うと2.75Tでは154GHz付近で電子サイクロトロン共鳴放射光が強くなることが予想される。これらのことを総合的に考慮したうえで実験条件と目的に応じて77GHzおよび154GHzを使い分ける。実験の方針としてはまずは信号強度の強い低い周波数成分(+-1GHz以内)のスペクトルで熱化したバルクイオンのイオン温度を計測する。そして、荷電交換分光法など他の手法で計測したイオン温度と比較し計測精度を定量的に評価する。この段階の実験では77および154GHz双方を用いてSNRの評価を行う。 次の段階で高速イオンの計測に取り組む。高速イオンは+-1から+-5GHzの高い周波数成分を持つ散乱光で低い周波数成分に比べて信号強度が一桁程度小さくなり、計測はより困難になることが予想される。上記のSNRの評価に基づき77または154GHzの適切な周波数を選択する。 77GHzの実験では中性粒子ビーム入射による高速イオン成分の計測にすでに成功しているが、今後は物理解析を目指した実験データの取得を目指す。磁力線と垂直方向に加熱用の中性粒子ビームを入射すると高速イオンの損失による電磁揺動が間歇的に起きることが最近明らかになってきた。CO2レーザー計測により高速イオン励起による電磁的不安定性の詳細計測を行い、協同トムソン散乱により、この不安定性による閉じ込められた高速イオンの損失を計測することを目指す。
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Remarks |
申請者が担当している九州大連携大学院講座の研究紹介。本科研費での研究補助を明記した上で本科研費で取り組んでいる協同トムソン散乱計測について大学院進学希望者を対象に説明。
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Research Products
(12 results)