2016 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー密度シリコン負極の実用に向けた電極界面制御とイオン伝導機構の解明
Project/Area Number |
16H04649
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
春田 正和 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (90580605)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蓄電池 / リチウムイオン電池 / シリコン負極 |
Outline of Annual Research Achievements |
大容量リチウムイオン電池の負極材料として従来の黒鉛負極の10倍程度の容量を持つシリコン材料が注目されており、その実用化を目指す。シリコン負極の実用化のためには、電池寿命の向上が必要不可欠である。本研究では、我々が実用シリコン活物資として開発している鱗片状シリコン粉末のモデル電極としてシリコン薄膜を用いる。清浄な表面を有するシリコンモデル電極を作製し、電池寿命の低下要因である電解液の分解機構を把握する。さらにシリコン薄膜上に表面被覆処理を施すことにより電解液分解の抑制を図り、シリコン負極の寿命向上の指針を示すことを目的とする。 研究課題の遂行にあたり、シリコン薄膜モデル電極作製に使用するスパッタ装置を導入した。清浄なシリコン表面を担保するため、大気非暴露でグローブボックスに搬送可能な設計とした。装置導入後に成膜条件の最適化を行い、クーロン効率(充放電効率)の高いシリコン薄膜が安定的に得られるようになった。このシリコン薄膜に炭素被覆層を大気非暴露で形成し、電気化学特性に与える影響を調べた。炭素被覆層の形成により、平均クーロン効率および容量維持率が向上した。サイクル後のシリコン電極のSEM観察結果等より、炭素被覆により電解液の分解が抑制されるとともに、シリコン薄膜の割れが抑制されることが明らかとなった。また、シリコン電極の電気化学特性は炭素被覆層の構造にも依存していることが分かってきた。これら炭素被覆によるシリコン電極の特性変化に関して、インピーダンス測定およびin-situ AFMによる解析も進めている。 さらに被覆材料としてフッ化物の検討も行い、シリコン電極上での電解液分解の抑制に有効であることが分かってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定通りシリコン薄膜上に炭素被覆を行い、シリコン負極特性の改善が得られており、炭素被覆が電解液分解の抑制に有効であることが分かってきため。さらには、当初予定していなかった、フッ化物被覆も電解液分解抑制に有効であることが明らかになってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度の結果より、シリコン電極の電気化学特性が表面被覆により向上するとともに、被覆材料に大きく依存することが分かってきた。被覆材料として、これまで検討した炭素に加え、酸化物やフッ化物を用い、さらには二種類の混合組成の検討により、さらなる特性改善に取り組む。 上記の表面処理を施したシリコン電極を充放電特性、サイクル寿命、インピーダンス特性の観点から評価を行うと伴に、in-situ AFM、SEM/EDXにより表面の観察を行い、電解液分解と表面被覆層の関係を調べる。この評価結果をもとに、シリコン負極における被膜形成機構と劣化機構の解明に取り組むとともに、シリコン負極特性向上に適した被覆組成を検討する。 上記実施内容の進捗状況にあわせて、表面被膜だけではなく、シリコン自身の合金組成の調整による特性改善にも取り組む予定である。
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