2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04671
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
等 誠司 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (70300895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中林 一彦 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期病態研究部, 室長 (10415557)
福家 聡 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20422660) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胚盤胞 / ES細胞 / 運命決定 / ヒストンH2B / モノユビキチン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経幹細胞は、胎生期に全ての神経細胞・グリア細胞を産み出すのみならず、成体脳でも一生に亘って新生神経細胞を産生し、脳の構築・機能維持に極めて重要な役割を果たす。神経幹細胞の形成や維持、分化開始を決定する因子として、エピゲノム修飾が注目を集めている。研究代表者はこれまでに、神経幹細胞の未分化性維持に関わるエピゲノム因子としてBre1aを同定し、機能解析を行ってきた。Bre1aが、多くのゲノム修飾因子の発現を制御しているという新たな知見を得たことから、本研究を計画した。Bre1aを中心に、様々なエピゲノム修飾因子が織りなすネットワークを解析することで、神経幹細胞の運命決定のメカニズムを明らかにし、多様な神経細胞・グリア細胞からなる脳が構築される根本原理を明らかにすることを目的とする。 平成29年度には、Bre1aノックアウトマウスの胚盤胞から、Bre1a-/-, Bre1a+/-, Bre1a+/+の遺伝子型のES細胞を作製し、細胞増殖などの基本的な性質を調べるとともに、RNA-seq法により遺伝子発現プロファイル解析を行った。その結果、Bre1a-/- ES細胞では顕著に細胞周期が延長していることが判明し、その原因としてCyclin-dependent kinaseの発現変化が考えられた。Bre1aノックアウトによって発現変化する遺伝子を中心に、ChIP-seq法を用いて、Bre1aが媒介するヒストンH2Bのモノユビキチン化の分布を解析した。予備的な結果ながら、発現変化する遺伝子の幾つかでは、H2Bモノユビキチン化が消失していることが判明した。一方、Bre1aノックアウト胚盤胞の解析では、胚葉分化が遅延していることが明らかになり、Bre1aが早期胚の発生に極めて重要な働きをしていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、Bre1aノックアウトマウスから野生型・ヘテロ・ホモの遺伝子型をもつES細胞株を3ライン以上樹立した。さらに、CRISPR/Cas9法を用いて、誘導型Creリコンビナーゼの発現によってBre1をノックアウトし、同時にテトラサイクリン誘導によりBre1発現量を制御できるES細胞を作製し、Bre1aノックアウトによる性質の変化を詳細に解析している。また、Bre1aが触媒するモノユビキチン化ヒストンH2Bに対してChIP-seqの条件検討を行い、最適条件を確立して野生型およびBre1aノックアウトES細胞の全ゲノムにおけるモノユビキチン化ヒストンH2B分布のデータを獲得している。従って、本研究課題は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに樹立した複数のBre1aノックアウトES細胞および、CRISPR/Cas9のゲノム編集技術とテトラサイクリン誘導システムを用いて作製した、Bre1aコンディッショナルノックアウト/過剰発現ES細胞を用いて、ChIP-seq およびRNA-seq法によりBre1aが制御するエピゲノム修飾と、それによる遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析する。モノユビキチン化ヒストンH2Bのみならず、ヒストンH3やDNAメチル化に対する影響も含めて調べていく予定である。 一方、早期胚で多能性を有する内部細胞塊の細胞が運命決定していく分子メカニズムに、Bre1aがどのように関与しているのかを解明するため、内部細胞塊から3胚葉へと分化していくときに発現調節される遺伝子を、RNA-seq法などによって明らかにする。ES細胞で解明されたエピゲノム修飾と遺伝子発現変化との関係が、早期胚においても成立しているかどうかを解明する予定である。
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Research Products
(5 results)