2017 Fiscal Year Annual Research Report
人工ヒトがん幹細胞の合成致死性を指標とするがん根治療法の開発
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16H04701
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
清野 透 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (10186356)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / 末梢型肺腺がん / 融合遺伝子 / 合成致死 |
Outline of Annual Research Achievements |
末梢型肺腺がんの起源細胞は、その培養の困難さから今まで不明であったが、申請者らは、TRU type肺腺がんにはKRAS変異以外に、EGFRの変異や増幅が高頻度に見られる他、近年ALK-, RET-, ROS-融合遺伝子などが見つかっている。これらの変異はKRAS変異と排他的に観察され、KRAS変異と同一経路の活性化をもたらす変異である。当初、HPV16 E6,E7, MYCの3因子に加え、KRAS, BRAF, EGFR, ALK-, RET-,ROS-融合遺伝子を加えたベクターをヒトBASC候補細胞に導入し肺腺がんiCSCを樹立する予定であったが、ALK陽性肺がんなどはp53変異の頻度が低いため、p53を不活化しないよう変異CDK4,cyclin D1, TERTで不死化したヒトBASC候補細胞に活性型EGFRやALK-, RET-, ROS-融合遺伝子の他、変異AKTをドキシサイクリンで発言誘導できるレトロウイルスベクターで導入した。これらの細胞は不死化前の細胞と同様TTF1陽性/p63陽性の細胞であることを確認し、ドキシサイクリン添加により各融合遺伝子あるいは各がん遺伝子産物の発現誘導を確認した。一方、H30年度にCas9/gRNAによるscreeningが開始できるようにsgRNAライブラリーの調製、タイトレーションし、実行導入効率に問題ないことを確認した。 一方、KRASに変異を持つ肺腺がん細胞株や膵がん細胞株に対しドミナントネガティブに働くMYC(OmoMYC)を発現誘導させることによりマクロピノサイトーシスによる空胞化を伴う細胞死を誘導できる事を確認した。また、この細胞死誘導ががん細胞で発現している変異KRASに依存していることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、HPV16 E6,E7, MYCの3因子に加え、KRAS, BRAF, EGFR, ALK-, RET-, ROS-融合遺伝子を加えたベクターをヒトBASC候補細胞に導入し肺腺がんiCSCを樹立しようとしたが、樹立された細胞はTTF-1陰性、p63単独陽性となってしまい、肺腺がんのモデル細胞として適切でないと判断した。その結果、変異CDK4,cyclin D1, TERTで不死化したヒトBASC候補細胞に活性型EGFRやALK-, RET-, ROS-融合遺伝子の他、変異AKTをドキシサイクリンで発現誘導できるレトロウイルスベクターを新たに作成し導入したため、人工iCSCの樹立に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
膵管上皮細胞を用いた計画が予定通り進んでいないと判断し、肺上皮幹細胞を用いたin vitro発がんモデルの作成をH29年度に進めた。しかし、膵管上皮細胞のin vitro発がんモデルでは活性型変異KRASに対して細胞死を誘導できない細胞が、子宮頸部角化細胞に比べて高頻度に出現し、活性型変異KRASに耐性の細胞が樹立される事が分かった。これらの細胞はMYCの発現が高くなっている傾向が認められたが、単にMYC蛋白の安定化により、活性型変異KRASに耐性になったのかを調べるために、この細胞を用いてCas9/gRNAによる合成致死screeningを進め、MYCを含めた細胞死抑制に関わる遺伝子群を同定する。 一方、変異CDK4,cyclin D1, TERTで不死化したヒトBASC候補細胞にALK-, RET-, ROS-融合遺伝子の他、変異AKTをドキシサイクリンで発現誘導できる細胞を用いて、TRU-type肺腺がんのモデルを作製する。これらの細胞に、4-OHT添加によりMYCの機能を制御可能なMYC-ERT2を追加導入し、ALK-, RET-, ROS-融合遺伝子、変異AKTなどの発現とMYCの活性を独立して制御できる細胞を樹立中である。これらの細胞が、臨床的なTRU-type肺腺がん細胞を忠実に反映しているかどうかを、免疫不全マウスへの移植実験による検証を予定している。また、H29年度中にできなかった各キナーゼに対する阻害剤が特異的に増殖抑制活性を示すかをin vitroで調べる。TRU-type肺腺がんのモデルがん幹細胞が樹立できたら順次、Cas9/gRNAによる合成致死screeningを進めドライバー遺伝子の違いによる標的遺伝子の異動を調べる。
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