2017 Fiscal Year Annual Research Report
C. elegans最近縁種のゲノム、形態発生、生態解析に基づく比較進化研究
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16H04722
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
菊地 泰生 宮崎大学, 医学部, 准教授 (20353659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 菜摘 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70435585)
杉本 亜砂子 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (80281715)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | C elegans / 姉妹種 / 比較ゲノム / 種分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Caenorhabditis elegans の姉妹種を石垣島のイチジクから発見した。この線虫(Caenorhabditis sp. 34)はこれまで知られているなかでC. elegans に最も近縁であるにもかかわらず、C. elegans の2 倍以上の体サイズをもち、植物や昆虫とインタラクションするなど、C. elegansとは全く異なる生殖様式や生態を有している。これはsp.34 がEvoDev、比較生態、比較ゲノム研究などに最適な材料であることを意味し、比較生物学の研究材料にふさわしい。本研究では、sp.34 線虫の高品質なリファレンスゲノムを構築し、C. elegans との比較を行う。さらに、詳細な形態、発生、生態の観察に基づきC. elegans との違いを明らかにし、遺伝学研究ツールを開発・活用することで遺伝子機能も含めたシステマティックな比較解析を行う。これら一連の研究を通して、これまでにない比較進化学研究プラットフォームを構築することを目的とする。本年度は、の形態観察を光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いて行い、新種記載を行い、C.inopinataと名付けた。ラボでの培養条件等の最適化のため、温度適性試験や餌試験などの基礎生物学的解析を行った。比較ゲノム解析のためのリファレンスゲノムの構築を複数のDNAシーケンサーを用いておこなった。さらに遺伝子発現解析を行い、遺伝子予測を行った。遺伝学研究ツールの開発に向けてRNAi法の試行しフィーディング、ソーティングがどちらも有効であることを確認した。また、マイクロインジェクションによるトランスジェニック作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで未記載であったC. elegansの初めての姉妹種、線虫C.inopinataの形態観察を光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いて行い、新種記載を行った。新種線虫C.inopinataの温度適性を10°Cから3度刻みで36°Cまで行い、27℃が最適温度であることを確認した。また、複数の培地とバクテリア餌条件の検討を行い、研究室内での最適な培養法を確立した。新種線虫C.inopinataのリファレンスゲノム構築のためシーケンサー(1分子シーケンサーPacBioとIllumina HiSeq, MiSeq)でDNAリードを獲得し、高品質のゲノムアセンブリーを構築した。さらにオプティカルマップを用いて、リファレンスゲノムの品質向上をおこなった。また、網羅的遺伝子発現解析(RNAseq解析)を行い、その情報に基づいて遺伝子部位の予測を行った。新種線虫C.inopinataの遺伝学研究ツールの開発に向けて、RNAiのソーキングやフィーディング法の試行を行い、発現部位の異なる遺伝子に対する有効性を検討して、RNAiが遺伝学研究ツールとして本線虫に有効であることを確認した。新種線虫C.inopinataのトランスジェニックの作成を微量遺伝子導入(マイクロインジェクション)を用いて行い、蛍光タンパク質の異種発現により、C.inopinataがC. elegansと同程度の効率でトランスジェニックの作成できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
①形態観察と基礎生物学的解析: 走査電子顕微鏡での撮影を行う。ライフサイクルを確定させるためにラボ内での成長速度、至適温度、オスメス比、耐久型幼虫の出現傾向を観察する。 ②比較ゲノム解析: リファレンスゲノムに対し遺伝子予測を行い遺伝子モデルセットを獲得する。遺伝子予測に利用するRNAseqをメス、オス、幼虫から抽出したRNAを用いて獲得する。 ①遺伝学的研究ツールの開発: CRISPR-cas9系によるトランスジェニック、遺伝子破壊株の作成手法を本線虫のために最適化し、使いやすいツールとして確立する。雌雄同体のC. elegansと異なり雌雄異体であるため、株の確立には工夫が必要である。
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