2017 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の中枢神経系と感覚器の複雑化を可能にしたゲノム基盤の解明
Project/Area Number |
16H04724
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
日下部 岳広 甲南大学, 理工学部, 教授 (40280862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
中井 謙太 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60217643)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホヤ / メダカ / 脳 / 感覚器 / プラコード / 神経堤 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物型視物質オプシンをもつ視細胞を包含し、脳から派生して形成される光受容器は、ホヤと脊椎動物の共通の形質である。ホヤの光受容器は単純な眼点であるのに対し、脊椎動物の眼は多様で特殊化した細胞から構成される精緻で複雑な器官である。光受容器の複雑さの獲得過程とその制御機構の解明を目指し、ホヤと脊椎動物のそれぞれについて、光受容器の発生の制御機構に関する解析を行った。前年度にホヤ胚の脳原基の特定の細胞核をレーザー光照射によって蛍光標識し、発生運命を追跡することにより明らかにしたホヤ眼点の細胞系譜の解析を、さらに発展させて、細胞分裂パターンの制御による眼盃の形態形成機構と転写因子群のダイナミックな発現による眼点視細胞の発生機構を明らかにした。また、視細胞で確立した細胞系譜解析手法を、脊椎動物視床下部ニューロンとの相同性が指摘されているホヤ幼生の脳内細胞群に適用し、細胞系譜を明らかにした。脊椎動物においては、視細胞の多様性を制御する因子の候補として研究代表者らが同定したmiRNAの機能を解析した。CRISPR-Cas9法によるゲノム編集を駆使して、網膜特異的miRNAや視細胞特異的転写に関わるシス制御領域を欠損させたメダカ系統を作製し、次世代シークエンサーを用いて網膜のトランスクリプトーム解析を進めた。その結果、視細胞の多様性制御に関与することが知られている転写因子群やオプシン遺伝子に加え、これまで視細胞の発生・分化や機能制御との関わりが知られていないいくつかの転写因子についても、miRNA欠損網膜で有意に発現量の変動がみられた。これらの転写因子群は網膜の発生や機能制御に関わる可能性がある。さらに、脊椎動物ゲノムを網羅的に解析した結果、網膜における視細胞多様性および色覚機能と視細胞特異的miRNAをコードする遺伝子のゲノム中の有無に相関がみいだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に論文発表したホヤ幼生の細胞系譜を詳細に明らかにする手法を、眼点視細胞以外に適用して、脳・感覚器の細胞系譜の解明が進展した。EXPANDEコンソーシアムと共同で明らかにしたカタユウレイボヤトランスクリプトームは、発生段階の網羅性と精緻さにおいて、これまでのホヤを対象とした研究のなかでも突出している。これを用いたホヤ-脊椎動物間のトランスクリプトーム比較解析の論文を発表することができた。また、視細胞特異的miRNAのノックアウト個体のトランスクリプトーム解析と比較ゲノム解析が順調に進み、眼の発生と進化に関して興味深い結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き胚組織・器官や遺伝子機能を操作した胚・幼生についてのトランスクリプトーム解析を進めるとともに、脳領域・感覚器の発生への関与が推定される細胞間シグナル分子・受容体、転写因子、ノンコーディングRNAについて、ノックダウン実験やゲノム編集法によるノックアウト、野生型および変異体の強制発現などの実験を行い、表現型の解析、作用する標的分子の同定を行う。ホヤと脊椎動物の相同器官や相同な細胞種の間で、発生プログラムおよび細胞機能の比較を行い、脊椎動物の脳・感覚器の高度な発達の背後にある分子的基盤と脊椎動物ゲノムの特性を考察する。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Constrained vertebrate evolution by pleiotropic genes2017
Author(s)
Haiyang Hu, Masahiro Uesaka, Song Guo, Kotaro Shimai, Tsai-Ming Lu, Fang Li, Satoko Fujimoto, Masato Ishikawa, Shiping Liu, Yohei Sasagawa, Guojie Zhang, Shigeru Kuratani, Jr-Kai Yu, Takehiro G. Kusakabe, Philipp Khaitovich, Naoki Irie and the EXPANDE Consortium
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Journal Title
Nature Ecology & Evolution
Volume: 1
Pages: 1722~1730
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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