2017 Fiscal Year Annual Research Report
代謝とヒストン修飾の制御による安全かつ効率的な心筋細胞リプログラミング法の確立
Project/Area Number |
16H04725
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
川村 晃久 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (90393199)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 心筋再生 / リプログラミング / 幹細胞 / 代謝 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子導入によるリプログラミングの手法は、線維芽細胞からiPS細胞のみならず種々の目的の細胞を直接的に誘導できる新たな再生医療のツールとして期待されている。心臓再生療法の実現に必要な安全性とコスト削減に貢献する目的で、申請者は、これまでiPS細胞へのリプログラミングに関する分子機構の解析をすすめ、iPS細胞誘導過程で出現する特定の細胞集団から直接的に心筋細胞を誘導することに成功した。本研究では、これまでの知見をもとに、リプログラミングで代謝経路とクロストークするアセチル化やメチル化の制御因子の詳細を明らかにし、線維芽細胞から直接的に心筋細胞を安全かつ効率的に誘導する心臓再生療法の基盤構築を目標とし、次の4つのテーマに沿って研究を着手した。 テーマ1 直接的心筋細胞誘導過程におけるヒストン修飾領域と代謝産物の網羅的解析、テーマ2 ヒストン修飾と代謝経路が心筋細胞特異的遺伝子に及ぼす影響の解析、テーマ3 ヒストン修飾と代謝経路が細胞周期・発癌経路に及ぼす影響の解析、テーマ4 ヒストン修飾と代謝経路の制御による腫瘍形成リスクの少ない心筋細胞作製法の開発 平成29年度は、主にテーマ1の解析結果をもとにテーマ2の研究が推進された。すなわち、初期化誘導過程の細胞においてiPS細胞になる予備群と心筋細胞になる予備群との間に代謝様式の違いが明らかとなった。あるメタボライトの細胞内量の違いにより転写因子Xの活性が異なることが見いだされた。さらに、心筋細胞予備群では、iPS細胞予備群と比較してヒストン修飾領域が異なる可能性が示唆された。今後も、ヒストン修飾と代謝経路とのクロストークの詳細を明らかにしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、心臓線維芽細胞や胎仔線維芽細胞へ、ウイルスベクターにより初期化4因子を遺伝子導入して心筋細胞誘導実験を行い、テーマ1で得られた「直接的心筋細胞誘導過程における代謝産物の網羅的解析」の結果をもとに、テーマ2「ヒストン修飾と代謝経路が心筋細胞特異的遺伝子に及ぼす影響の解析」に着目して研究を推進した。すなわち、メタボローム解析により、iPS細胞になる予備群と心筋細胞になる予備群との間に代謝様式の違いが明らかとなり、あるメタボライトの細胞内量の違いにより転写因子Xの活性が異なることが見いだされた。この結果は、リプログラミング誘導によりiPS細胞だけでなく、直接的に心筋細胞が誘導されるメカニズムの解明に繋がるものと期待される。上記の理由から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、テーマ1で得られた「直接的心筋細胞誘導過程における代謝産物の網羅的解析」の結果をもとに、テーマ2「ヒストン修飾と代謝経路が心筋細胞特異的遺伝子に及ぼす影響の解析」を推進して、申請計画に掲げた通りテーマ3~4へ繋げていきたい。 すなわち、テーマ2では、直接的な心筋細胞誘導に重要な代謝経路とヒストン修飾のクロストークの詳細をさらに明らかにしていきたい。この結果をもとに、テーマ3では、i) 直接的心筋細胞誘導に関わるアセチル化が細胞周期・発癌経路に及ぼす影響に関する解析、ii) 直接的心筋細胞誘導に重要な代謝経路が、細胞周期・発癌経路に及ぼす影響に関する解析を、テーマ4では、i) 誘導した心筋前駆細胞あるいは心筋細胞の特性解析、ii) 心筋梗塞モデルへの細胞移植と生体リアルタイムイメージングを目標に研究を推進していく予定である。
|
Research Products
(8 results)