2017 Fiscal Year Annual Research Report
人工的な代謝酵素複合体(人工メタボロン)の構築と分子設計基盤の確立
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16H04732
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平野 展孝 日本大学, 工学部, 准教授 (10409089)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メタボロン / セルロソーム / インテグラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
代謝酵素複合体(メタボロン)とは、細胞内において代謝生合成経路を構成する酵素群が集合することで形成される巨大な酵素複合体である。このメタボロン形成によって、代謝反応を担う各酵素間で、基質と生成物が円滑に受け渡されることにより、代謝中間体が細胞質中に拡散することなく、低濃度の基質・酵素存在下においても代謝反応が効率良く進行すると考えられている(基質チャネリング効果)。本研究では、植物バイオマス分解酵素複合体(セルロソーム)の骨格タンパク質―酵素間相互作用を利用して、人工的な代謝酵素複合体(人工メタボロン)を試験管内・細胞内において構築し、メタボロン形成効果と基質チャネリング効果の解析を行うことを目的とした。平成29年度は、植物由来抗腫瘍活性物質の生合成系をモデルとして、植物バイオマス分解酵素複合体の骨格タンパク質を用いて、大腸菌内において人工代謝酵素複合体(人工メタボロン)の細胞内形成を行い、メタボロン形成効果の評価アッセイ系の構築を行った。前年度に行った微生物由来色素化合物の生合成系酵素遺伝子群のゲノム導入と同様の手法で、放線菌ファージ由来インテグラーゼを用いて、大腸菌ゲノムへ生合成酵素遺伝子群の導入を行い、複合体骨格遺伝子を導入した細胞と、導入していない細胞の生合成産物の合成量の比から、メタボロン形成効果を評価した。その結果、生合成酵素を複合体化した場合と、複合体化していない場合を比較して、前年度に試験した色素化合物と同様に、抗腫瘍活性物質においても生合成量が増加する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物由来色素化合物、並びに植物由来抗腫瘍活性物質の生合成系をモデルとして、植物バイオマス分解酵素複合体の骨格タンパク質を用いて、大腸菌内において人工的な代謝酵素複合体(人工メタボロン)の細胞内形成を行った。生合成酵素を複合体化した場合と、複合体化していない場合を比較して、色素化合物、抗腫瘍活性物質共に生合成量が増加する結果を得た。一方、複合体化に必要な骨格結合ドメインの融合が、酵素種によっては酵素活性に不利に働く場合があることが判明したが、複合体化による生合成量の改善効果は、いずれの生合成系においても確認されているため、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、生合成酵素の複合体化によって生合成量の改善が確認された、微生物由来色素化合物や植物由来抗腫瘍活性物質の生合成系を対象に、更に生合成量の改善を図るため、複合体化に用いる骨格構造の改変を試みる。生合成酵素遺伝子に加え、これまでよりサイズの大きな複合体を形成する骨格遺伝子などを大腸菌細胞へ導入する。骨格遺伝子を導入した細胞と、導入していない細胞の生合成産物の合成量の比から、メタボロン形成効果を評価する。また、大腸菌細胞内において確認した人工メタボロン形成による生合成量の改善効果を試験管内で解析するため、上記生合成系の試験管内再構成を目指す。
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